「昭和風」硬めプリン 自粛疲れを癒やす素朴な味
昭和風の「硬め」のプリンが復権している。カフェやコンビニでも見かける機会が増えてきた。新型コロナウイルスで外出自粛ムードが続くが、ネット通販やデリバリー、テークアウト(持ち帰り)できる店もある。自粛疲れの解消に、おいしいプリンでホッと一息ついてみてはどうだろうか。
「自分が好きだった硬めのプリンを作って販売している」。東京都北区のJR十条駅前に2019年2月にオープンした「キッサフムフム」。店主の熊谷弥奈美(みなみ)さんが目指しているのは昔ながらの昭和風プリンだ。
カップではなく6人分のホール(容器)で作ったプリンはボリュームたっぷり。添えられた生クリームと一緒に食べると、しっかりとした弾力が感じられる。
プリンは低温で50分間じっくり火を通して作る。(表面や中に泡のような空洞ができる)「す」が入りにくくなるので食感が良くなる。しっかり卵をこすことで口当たりもなめらかになるという。
新型コロナの感染防止のため現在、営業は週2~3日、テークアウトのみとなっている。メニューは日替わりで、店主の熊谷さんがインスタグラムなどに投稿して知らせている。価格は6人分のホールプリンが2700円、1人分のカットサイズが450円だ。
時代に左右されず、硬めのプリンを作ってきたのは、神奈川県横須賀市のカフェ&レストラン「マーロウ」。プリンはビーカー入りと印象的だ。硬めとあってビーカーから出してもプリンは崩れない。定番で一番人気の「北海道フレッシュクリームプリン」や期間限定の「ラム・レーズンプリン」など常時10種類以上が並び、価格は1個734~1080円。
プリンは約35年前の創業当時からレストランのデザートとして販売されていた。「おいしいプリンを家でも食べたい」といった客の声に応え、テークアウトにも対応した。
原材料にもこだわる。無添加で香料などは一切使わない。卵は千葉県の養鶏場のもの。植物性のエサだけを与えて育てた「食菜卵」を使っている。牛乳も新鮮な北海道産を使う。
神奈川県や都内にある8店舗のうち、新型コロナの影響で2店舗は現在休業中だが、外出自粛の影響もあってオンライン販売は伸びている。
プリン専門店POPOCATE(ポポカテ、東京・渋谷)では、硬めと柔らかめの2種類を販売している。もともとビル管理会社を運営していた長岡義彦最高経営責任者(CEO)が「自分の好きなプリンを作りたい」と、5年前にオープンした。
「子供の頃に食べたプリンの味が忘れられない」という長岡さんは試行錯誤して素朴な味わいのプリンにたどり着いた。
素朴な味だからこそ原材料を大切にする。全国の卵を試し「熱を加えてもにおいが出ない神奈川県の養鶏場の卵を選んだ」という。プリンにかけるカラメルも苦みを強めにするなどこだわっている。
硬めプリン「POPOかた」、柔らかめの「POPOやわ」など約8種類あり、値段は1個464~550円。
店はもともとテークアウト中心に営業しているが、最近はオンライン販売も伸びているという。4月からはデリバリーも始めた。東京23区を中心に神奈川や埼玉にも届ける。長岡さんは「こんな時期だからこそ食べてほしい」と話す。
プリンの基本的な原材料は卵、牛乳、砂糖と、至ってシンプル。「店の味には及ばずとも、自分でもプリンが作れるのではないか」。自炊にはまっている記者(26)として、在宅勤務の合間を縫って作ってみた。
インターネットで「硬めプリン」と検索すると、レシピがたくさんヒットする。卵の量を多くすると硬めに、生クリームなどを入れると柔らかめに仕上がるようだ。早速、材料をそろえて作ってみた。高温で加熱すると「す」が入ってしまうらしい。食感が悪くならないように低温でじっくりと火を通すことを心がけた。とはいってもオーブンレンジのスイッチを入れるだけだ。
できあがりはまずまず。低温でゆっくり温めただけあって「す」は入らず、見た目はきれいだ。食感も狙い通り硬めに仕上がった。反省点は味付けが少し甘くなりすぎてしまったことぐらいか。
自粛生活に飽きたら、「昭和風」硬めのプリンはどうだろう。ネット通販やテークアウトで手軽に食べられる。懐かしい味で一息つけば仕事のやる気もアップ、在宅テレワークのストレスを癒やす「オアシス」タイムになるかもしれない。
(嶋田 航斗)
=おわり
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