――商社は体育会系というイメージが強かったですが、働いている人や働き方は変わってきていますか?
太田 商社で働く人材も、かつてあった、体育系の人が活躍するというイメージは、今や相当に薄れています。文系、理系、キャリア採用、帰国子女、院卒など、多様な人材が集まっています。
組合がキャリア相談に乗る
葛西 業務内容も貿易主体から投資の割合が増えてきました。エネルギーや食品など業界別で部門が分かれていますが、縦割りも薄れてきています。「ブリテンボード」という社内公募制度があり、入社3年以上の社員であれば他の部署への異動を希望でき、実際に年間で数十人が異動できています。
自律的であれば、縦横無尽に働き方を選べるということです。逆に言えば、「キャリアアンカー」を見つけるまでは、自分が何に向いているのか、何をやりたいのかと悩むかもしれません。「投資をやってみたいがいきなりできるか不安」など。そういうとき、我々のキャリアカウンセリングで少しでも力になれればと思っています。
――組合の仕事を通じて学んだこと、やりがいは何ですか?
高橋 多角的な視点で物事を捉えることです。例えば会社との交渉の中では、意見がぶつかることもあります。長期的な目指すべき姿は「社員がよりイキイキと働ける会社にしたい」という方向で一致しているのですが、見ている側面が違うが故に、短期的な視点では意見が合致しないということもあります。自分たちから見える世界だけではなく、他の人から何が見えているのか、そうした観点からも物事を捉えることで交渉がスムーズに進むこともあるのです。
葛西 MPUでは人事評価の納得度向上に取り組んでいます。昨年、一年間の活動結果をみると、前年対比で5―10%改善しています。組合員は約4500人なので、数百人のインパクトになります。また、個別にこれからのキャリア形成について相談に乗るケースも増えてきて、結果的に社内の公募制度等を通じて本人が希望するキャリアの実現を支援できたときもやりがいを感じます。
ここで葛西さんが述べているMPUというのが、新生・三井物産労働組合の通称名称にあります。MPUとは、Mitsui People Unionの略称です。このMPUを立ち上げた中心的なメンバーが太田さんです。太田さん、葛西さん、高橋さんを含め、計6名の専従職員によってMPUは、様々な成果をあげています。以下はMPUの取り組みの一部です。
(1)社員のキャリア形成支援(社内公募制度拡充の提案、キャリアコンサルティングの実施)
(2)働き方改革推進(テレワーク制度導入の提案)
(3)調査を通じたデータ分析(独自のエンゲージメント調査や人事施策に関するサーベイ実施・分析)
ポイントは、より良い働き方と社員の自律的なキャリア形成に取り組んでいる点です。それも、社員の声を反映して、経営層に提案していくボトムアップ型の「働き方改革」なのです。これまで組合というと、経営層と「対峙」するというイメージがありましたが、MPUの取り組みは、社員と経営層をつなぐ「共創型」の取り組みです。
社員一人ひとりの生の声に寄り添うという姿勢も貫かれています。具体的には、MPUの取り組みとして、会社に対して社員一人一人の適性に合わせたキャリアパスの導入を会社に働きかけ、そのために、MPU専従職員は、キャリアコンサルティングの国家資格を取得するという徹底ぶり。
このように社員に寄り添い、総合的に取り組むMPUに、企業内組合の新たな胎動をみることができます。