クオータ制で女性管理職を ロールモデル作る最良策ダイバーシティ進化論(出口治明)

2020/4/25
写真はイメージ=PIXTA
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年度が変わり、新しく管理職になった方も多いでしょう。どんな組織であれキーワードは女性です。すでに経済社会は製造業からサービス業に主軸を移しています。そのユーザーは7割が女性。中高年男性にニーズは分かりません。こうした需給のミスマッチに対応するのがクオータ制です。

女性にゲタを履かせる制度はおかしいという意見があります。たしかに形式的には不平等ですが、男女格差がある現実を考えれば実質的には平等といえます。無意識のうちに男性が高いゲタを履いているのが今の日本ですから。

クオータ制の一番の狙いはロールモデルを作ること。まずは女性の管理職を作りましょう。例えば管理職10人のうち、3人を女性と決める。最初は無作為でもいいから選ぶと、次は自分かもしれないと他の女性たちは準備します。それがクオータ制の本質です。

料亭などでは女将が店を仕切っています。そこに嫁いだ女性は義母という身近なロールモデルがいるから見よう見まねで仕事に取り組みます。ベンチャーも同じです。スティーブ・ジョブズを目指せといっても実感を持てませんが、大学の先輩が起業していたら「自分も」と思うもの。身近なロールモデルが個人の意識を変えるのです。

たとえクオータ制で選ばれた女性が他の管理職に比べて少し能力が劣ったとしても問題ありません。人をつくるのはポストです。そもそも「管理職にはなれない」と思って仕事をしてきたのだから、最初は差があって当然。ポストに就いたら出来るようになります。フランスではクオーター制によって内閣が男女同数になりました。政治はおかしくなりましたか?

こういう話をすると「女性は管理職になりたがらないから登用できない」という反論が出ます。でも女性の社会的地位が低く、無意識の偏見が社会の隅々まで行き渡っている社会で、女性は家事も育児も介護も押しつけられているのです。この上、管理職になるのは大変だと思うのは当たり前です。ゆがんだ社会構造がそうした意識を生み出しているのだと、管理職はしっかり認識してください。

女性の活躍においては、だれもが総論賛成のようです。でも重要なのは各論の実行。クオータ制はアンコンシャスバイアスを排除し、人為的に時間軸を短縮してロールモデルを作り出す最良の方法と考えます。

出口治明
立命館アジア太平洋大学学長。1948年生まれ。72年日本生命に入社、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを務める。退社後、2008年にライフネット生命を創業し社長に就任。13年から会長。17年6月に退任し、18年1月から現職。『「働き方」の教科書』、『生命保険入門 新版』など著書多数。

[日本経済新聞朝刊2020年4月20日付]

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