対話や学ぶ姿勢大切 完全オンラインの大学で得たことミネルバのふくろう(10)

YouTubeなどで見た知識を覚えている経験は誰しも少なからずあるのではないでしょうか。逆に、通常時の講義の内容や先日友人と交わした会話の内容をほとんど思い出せないという経験も、珍しいものではありません。だとすれば、我々が得る情報がネットという媒体を経由しているかどうかというのは、我々の学習や記憶定着には本質的な影響はないといえるでしょう。むしろネットは情報の宝庫。オンライン化を学習の障害ではなく、むしろ武器になり得ると自覚するだけでも学習効果は変わると私は思います。

通常の講義であれば、浮かんだ疑問を、授業進行を止めてまで教授にぶつけるのは心理的ハードルが高いかもしれません。本当は聞きたいことがあるのに、周りに配慮してその疑問をうやむやにしてしまい、その疑問が解消されないがために、それ以降の教授の発言がなかなか頭に入ってこない、という経験は誰しもがあるでしょう。しかしネット授業であれば、その場でブラウザのタブを開いて検索し、授業進行を一切妨げず、各自検索できる程度の疑問はその場で解消できます。

むしろ、こういった自由度があることによって、学生は授業に能動的に参加することが可能になるのではないかとも思います。ここでいう能動的な参加というのは、必ずしもバーチャル教室内で活発な発言が生まれているということではなくて、学生たちが自ら学ぼうとする姿勢のことを意味します。

教員はファシリテーター

次にもう少し踏み込んで、学生の学習意欲自体を刺激することは可能か、考えてみたいと思います。これはバーチャル授業にいそしむ多くの教育関係者が頭を悩ませる問題ではないでしょうか。ミネルバ大学の場合は、「反転授業」とディスカッション重視の講義形態を採ることでこの問題にアプローチしています。そして、その効果は非常に高いと私は実感しています。

「反転授業」というのは、講義を行うにあたって学生たちに最低限理解していてほしい内容を事前に共有し、それを前提として行う講義のことです。コンテンツが事前に共有されているので、学生は各自のペースで効果的に予習を行うことができます。また、出席する段階ですでに新鮮な基礎知識が頭に入っているので、講義の内容も理解しやすいし、本質的な質問も出てくるので、参加意欲は通常より高くなります(授業の詳細は第5回でも紹介しています)

少人数でのゼミ形式が可能なのであれば、ディスカッション重視の講義は反転授業の効果をさらに高めることになるでしょう。生徒同士で意見を交わすことで、予習してきた内容により深みを与えられます。一方通行での知識伝授ではないので、学生の脳もより活発になりますし、何より同級生たちの話を聞く方がやはり教授のお話よりも楽しいのです。

このとき一点だけ注意したいのは、教員は直接教えることよりも対話のファシリテーターの役割を意識するということです。パワーポイントを作ることよりも、どういう質問やトピックを投げかければ生徒の思考をより促進でき、対話のレベルを高めることができるのか、ということが重要ではないかと、ミネルバの教員や授業を見ていて強く思います。

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