隠れた個性派スイーツ探せ かわいくて春にぴったり
年初からの新型コロナウイルス危機で、春の喜びも半減という人も少なくない。そんな時、甘いものを口にするのが良いのでは。スイーツには人を幸せにする働きがあるからだ。春の送迎シーズンのプレゼントにも最適な、知る人ぞ知る地域の個性派スイーツを紹介する。
「わあ、かわいい!」。初め訪れた人は思わず歓声をあげるスイーツショップ「空想菓子店・おかしさん」。さいたま市の住宅街にある本店のほか、同市内のJR駅前に3店舗を構える地域の人気スイーツショップだ。
創業者であるSaoriさんが生み出す、オリジナリティーあふれる菓子ラインアップはネーミングもユニーク。チョコチャンククッキー「とれびあーん」や甘酸っぱいフルーツ味のマシュマロ「貴婦人のくちびる」、低カロリービスケット「真夜中の小腹事情」、サツマイモの自然な甘さが生きる「イモ姉さん」など個性的なお菓子たちが「ヘンゼルとグレーテル」のお菓子の家を思わせるディスプレーで並ぶ。
童話のお菓子の家には恐ろしい魔女が住むが、おかしさん本店で出迎えてくれたのは笑顔の飯田健太代表だ。Saoriさんの夫で元サラリーマン。「最初は経理などを手伝っているだけだったが、初めて支店を出した後に退職し、経営に専念している」。大学で建築を学んだ経歴を生かし、店舗設計にも力を発揮する。
2007年夏のオープン以来、地元で支持を広げたおかしさんだが、18年にSaoriさんが絵本「秘密の空想菓子店」を出版。さらに首都圏でのイベント出店を通して空想菓子が紡ぐ夢を広げてきた。
同店は「イラストコンテスト」で客が描いたお菓子のアイデアをパティシエが実際にお菓子にして、店舗で販売するイベントを実施している。絵の巧拙は無関係で、子どものアイデアが取り上げられることも多い。「作品が選ばれた子には、店で自分が発想した菓子を誰かが買うのを見てもらう。私たちが日々感じる感動と夢を味わってほしい」と飯田さん。
ユニークさでは東京・四谷3丁目に店舗を構えるチョコレートボール専門店「CHOCI TOKYO(チョキ・トウキョウ)」も負けてはいない。「なぜチョコレートボールか? それは最高品質のチョコレートを手軽に多くの人に味わってもらうため」と、広報担当の小尾笑佳さん。
フランス産最高品位のチョコレートで世界中から取り寄せたナッツやドライフルーツなどを包む商品ラインアップは全23種類。色とりどりのチョコレートボールが透明チューブに入って壁面にずらりと並ぶ店内の光景は壮観だ。
それぞれチューブの下にあるハンドルを回すとチョコレートが何粒か出てくる。客が自分の食べたいチョコレートボールを好きなだけ袋に選んで買う量り売りが基本だ。他にギフトやお試し用の詰め合わせも用意され、インターネットでの販売もしている。
ネットでお店を知ってプレゼント用に初めて来店したという50代男性は「子どもの頃親しんだガチャガチャのようで楽しい。試食したチョコはどれもおいしく、自分用にも買った」と表情をほころばせる。意外だが男性客も多いという。
おいしさに加えてヘルシーさにもこだわる。素材はすべて無添加、無着色。砂糖の使用量も抑えてダイエットや糖質制限をしている人にも配慮しており、ほとんどの商品はヴィーガン(完全菜食主義者)対応である。
小尾さんは「日本人は甘めのチョコレートが好きだが、最高品位のおいしさが存分に味わえるのはカカオ率が高いダークチョコレート。今後はラインアップを充実させて、ダークチョコレートのおいしさを発信していきたい」と意気込む。
見る、選ぶ、味わう。春の息吹が増すこの頃、人を幸せにするお菓子との出会いを求めてはいかがだろう。
(ライター 大谷 新)
[日本経済新聞夕刊2020年3月28日付]
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