書き味や開き具合にこだわり、「大人のノート」最新作
納富廉邦のステーショナリー進化形「大人のためのノート」後編
スマホや家電製品ほど頻繁ではないが、文具の世界も知らぬ間に進化している。文具に関する知識をアップデートする連載「ステーショナリー進化形」。前回の「手書き生かす仕事向けノート アイテア広げ、検索性も」に続いて今回取り上げるのは「大人のノート」。上質な紙を使い、書きやすさを追求したノートの最新作2モデルを、長年文具を見続けた納富廉邦氏が紹介する。
◇ ◇ ◇
前回は仕事に役立つ機能を備えたビジネスノートを紹介したが、実は大人向けのノートは、もう一つのトレンドがある。それは上質な紙を使い、書きやすさと高品質を追求したノートだ。
万年筆ブームも手伝って、製紙会社や製本会社も参入。万年筆で書くことを前提にしたオリジナル用紙を使う「グラフィーロ」(神戸派計画)、シンプルなデザインと筆記具を選ばない安定した書き心地の「MDノート」(デザインフィル)などを中心に、現在、ノートの世界で最もにぎわっているジャンルに成長した。
さらに最近では製本を工夫することでページが180度水平に開くスタイルも人気になっている。例えば、コクヨの「ナンバードノートブック」は、A5サイズの短辺を少し短くしたコンパクトなサイズに、ぴったりと180度開く製本と、全ページにノンブルを付けた製品。シンプルな装丁と扱いやすいサイズ、しっかり書ける紙質に、機能もプラスして、気軽に使えるビジネスノートに仕上がっている。
この路線での注目作が、2019年12月に登場した「Notebook」、そして20年3月に発売されたばかりの「2mm flat notes A5」だ。
さりげなく使いやすい「Notebook」
アッシュコンセプト(東京・台東)がプロデュースし、1938年創業の製本会社、伊藤バインダリー(東京・墨田)が製作・販売する「Notebook」はその名の通りシンプルなノートなのだが、目に優しい白の紙は、スルスルとした書き味が心地よく、筆記具を選ばない。製本の専門家が作っただけあって、360度開くページ、手への収まりは他では味わえない心地良さを持つ。
サイズはA5とA6、どちらも360度開けば、片手でホールドして立ったままでもスムーズに書けるし、机でじっくりと書くのも似合う。さりげなく使いやすいノートだ。それこそ、かつてのフランスで画家などに愛された「モールスキン」が、正統に進化したら、こういう形だったかもしれないと思わせる「身に着けておきたい」ノートなのだ。
A5でもA4でも「2mm flat notes A5」
「2mm flat notes A5」は新日本カレンダー(大阪市)のブランド「Kleid」と水平に開くノートで知られる中村印刷所(東京・北)が手を組んだノート。中村印刷所の水平開きノートは「おじいちゃんのノートブック」として話題になったので知っているという人も多いのではないか。
「2mm flat notes A5」は、A4用紙を二つ折りにしたものを、そのまま製本している。普通に使えばA5サイズのノートだが、実は、A4サイズの紙に書いているわけで、ノートから外せば、見開きページが1枚のA4用紙になるというのが、何よりの特長。
もちろん、ぴったりと水平に開くから、A4の紙に書いているのと変わらない感覚で書ける。デザインもスッキリとシンプルに仕上げられていて、紙もOKフールス紙を使用した2ミリ方眼。万年筆での書き心地にも配慮している。上質な紙を使った大人のノートは価格も高い製品も多いが、100ページ、650円という買いやすさもこのノートの魅力の一つだろう。
佐賀県出身、フリーライター。IT、伝統芸能、文房具、筆記具、革小物などの装身具、かばんや家電、飲食など、娯楽とモノを中心に執筆。「大人のカバンの中身講座」「やかんの本」など著書多数。
(写真 渡辺慎一郎=スタジオキャスパー)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界