新型コロナウイルスの感染拡大で消費全体への悪影響が広がっています。時代を先取りする存在でもある若者たちは、現在の状況をどのようにとらえ、どんな消費行動を取るのでしょうか。

藤原裕之・日本リサーチ総合研究所主任研究員「若年層、機能と意味使い分け」

若者の消費の現状と先行きを視野に入れ、企業はどんな対策を講じればよいのでしょうか。日本の消費動向に詳しい日本リサーチ総合研究所の藤原裕之主任研究員に聞きました。

――20~30代の若年層の消費額が減少している原因は。

藤原裕之・日本リサーチ総合研究所主任研究員

「人口の減少と、消費性向の低下です。1人当たりの所得は伸びているのに、消費に回す割合が減っているのです。したがって1人当たりの消費額はそれほど減っていないともいえます」

「所得の上昇に消費が追い付いていない現象を説明する経済学の仮説の一つは、『ラチェット(歯止め)効果』です。個人は消費支出を簡単には変更できないので、所得の変化とはタイムラグが発生するという見方ですが、私はもっと構造的な問題ではないかと思っています。年金をめぐる不安も一つの要因かもしれませんが、もっと前向きな、若者の価値観の変化が影響しているとみています」

――若者の消費を左右している価値観とは。

「今の若者の消費行動を決定づけているのは、『自分ごと意識』と『つながり意識』です。前者は、何事においても自分の価値観を大切にしながら行動しようとする意識。後者は自分がよいと思うものを友人や家族と共有しようとする意識です。物質の欠乏がない環境で、個性重視の教育を受けて育った若者たちは、消費行動でも自分にとっての意味を重視します。時間やお金を節約できる部分は、徹底的に無駄を省き、自分にとって価値があると判断した商品は多少高くても購入したり、SNS(交流サイト)を使って情報を拡散したりします」

――2つの意識はどんな現象を生み出していますか。

「色々なパターンがあります。土日は友人や家族と一緒に遠出をして買い物を楽しむ人もいれば、高額なアナログレコードに価値をみいだして購入する人もいます。普段はコンビニエンスストアで買い物をすませ、特別な商品には出費を惜しまない人もいます。昨今のタピオカブームをけん引してきたのは若者ですが、飲み物としての魅力だけでなく、知人と一緒に並んで買う時間が楽しいという声も耳にします」

――企業はどう対応すればよいのでしょうか。

「利便性や効率性を重視する『機能の市場』、情緒性やストーリー性を重視する『意味の市場』のどちらで勝負するのか、まず、フィールドを明確にすべきでしょう。機能の市場では、規模の経済が働きます。一方、意味の市場ではあえて規模を目指さず、企業自らが商品やサービスに強いストーリーやメッセージを込め、意味の濃さを維持できれば有効でしょう。意味の市場は、日本国内だけではなく、グローバルに展開できる可能性もあります。100円コーヒーと高級コーヒーが共存しているコーヒー業界や、デジタル音楽と、ライブやコンサートの市場が共存している音楽業界は2つの市場が相乗効果を生んでいる好事例です」

(編集委員 前田裕之)

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