買わない若者たち、実態は? 「自分の物差し」基準に

タピオカブームをけん引してきたのは若者だが…
タピオカブームをけん引してきたのは若者だが…

自動車や衣類、外食をはじめ多くの国内市場で、20~30代の若年層による消費額のシェアが長期にわたり低下しています。「若者の消費離れ」に類する言葉も聞きますが、消費に後ろ向きなのでしょうか。

第一生命経済研究所は、総務省の家計調査を基に世帯主が20~30代の総消費額を試算しました。2003年は48兆円で、18年には32兆円と15年間で33%減りました。19年は34兆円とやや持ち直しましたが、過去に比べると低い水準です。

総消費額が減った大きな要因は人口減少ですが、若年層の「黒字率」も一因です。毎月の可処分所得から消費額を差し引いた黒字額の割合を指します。同研究所の熊野英生首席エコノミストは、15年間の減少率のうち5%は、黒字率の上昇が原因とはじいています。この間、1世帯当たりの可処分所得は増えたため、1世帯当たりの消費額は6%減にとどまっています。

熊野氏は「若者は社会保障や将来への不安から貯蓄を増やしている。結果として総消費額が減り、現在の所得や雇用を悪化させる負のスパイラルが生まれている」と心配します。

別の見方もあります。ニッセイ基礎研究所の久我尚子主任研究員は「デジタルネーティブ世代で何事にも情報通の若者が増え、コストパフォーマンスをしっかり計算しながら消費をする傾向が強まっている」とみています。アルコールはリスクが高いと判断し、飲酒を避ける若者が多いのは一例と久我氏は説明します。

日本リサーチ総合研究所の藤原裕之主任研究員は、若者の消費には2つの側面があると解説します。徹底した節約志向で利便性を追い求める「機能の重視」と、自分にとって意味がある商品なら場合によっては多少高くても購入する「意味の重視」です。

藤原氏は、全国スーパーマーケット協会の「今後回数を増やしたい食事」に関するアンケート調査(16年)に注目しました。若者の回答で目立つのは「家族そろっての食事」や「家庭の味の手料理」などでした。

「評判の良い・人気のあるレストランやお店での外食」はシニア層の回答率が若者を上回りました。「個性重視の教育を受け、『世間の物差し』ではなく『自分の物差し』で行動しようとする意識が強い若者が多いため、大量消費につながりにくい。若年層の総消費額は減少傾向が続く」と同氏は予測します。

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藤原裕之・日本リサーチ総合研究所主任研究員「若年層