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予防の基本は「手洗い」 30秒以上かけて

最後に、現時点で私たちができる予防策をまとめておこう。

新型コロナウイルスの感染ルートは主に2つとされている。「飛沫感染」と「接触感染」だ。

【飛沫感染】感染している人のくしゃみ・咳によって空気中にウイルスなどの病原体が「飛沫」として排出され、それを吸い込むことによって起こる感染。だいたい1~2メートルの距離で感染する。
【接触感染】感染ウイルスが含まれた鼻汁、唾液などに直接触れることで手にウイルスがつき、その手で口や鼻を触ることで感染する。

これらへの対策は、従来のインフルエンザと同じで、「徹底した手洗い」が最も重要になる。外出先から戻ったとき、トイレに行った後、食事の前などには必ず石けんで手を洗うようにしよう。軽く水で流す程度の手洗いはNG。下の図にあるように石鹸を使って30秒以上かけてしっかり洗うことが大切だ。ノロウイルスと違って、新型コロナはアルコールでも消毒できるので活用したい。

手洗いでは、石鹸を泡立てて、手のひら、手の甲、指の間、爪の先、手首を、30秒以上かけてしっかりと洗う。

マスクは間接的な効果が期待できる

マスクでは新型コロナウイルスの感染を防げないといわれているが、間接的な予防効果は期待できると大谷さんは言う。

「マスクをしていると、喉の乾燥が防げます。喉が乾燥すると、気道の防御システムの力が弱まるので、喉の乾燥を防ぐことには意味があります。また、マスクできちんと鼻や口を覆えば、不必要に指などで鼻や口に触れてしまうことを避けられるので、結果的に接触感染の予防にもなります」(大谷さん)

ただし、マスクは正しい使い方を守らなければ意味がない。例えば、サイズが大きいものを使っていると、隙間ができてウイルスの侵入を許してしまう。また、つけ外しするときは、ゴム紐の部分を持って行う。特に外すときにフィルター部分を触ってしまうと、指にウイルスがつく可能性があるので注意だ。

マスクは正しい使い方を守る

もちろん、自分に感染症の疑いがあるときも、マスクを着用しよう。感染が広まるのを防ぐには、そもそも人が集まる場所に行かないこと。風邪のような症状があれば、感染を広げないために外出を控え、できれば仕事も休んでほしい。

これからの季節はスギ花粉症が本格化するのも問題だろう。「新型コロナウイルスは鼻の中にもいるので、くしゃみで飛沫感染が増えてしまいます。また、花粉症の人は気になって鼻などを指でつい触ってしまいます。すると、接触感染が増えやすくなるので注意が必要です」(大谷さん)。花粉症に悩まされている人は、今年は必ず薬をのんで症状を抑えるようにしたい。

また、新型コロナウイルスは、飛沫よりも粒子が小さい「エアロゾル」による感染も取りざたされている(参考記事「新型コロナで可能性指摘 『エアロゾル感染』とは?」)。「エアロゾル感染の可能性があるのなら、部屋の換気も大切になります。空気清浄機を使うのもいいでしょう。0.1マイクロメートル(0.0001mm)の粒子でも吸着する空気清浄機であれば、インフルエンザやコロナウイルスでも吸着できます」と大谷さんはアドバイスする。

◇  ◇  ◇

新型コロナウイルスは未知の病原体であり、不安に思う人は多いが、先ほども述べたように新型コロナウイルス感染症で人の命を奪うのは肺炎が原因だ。今回は、そもそも肺炎がどのような病気か、そして新型コロナウイルスによる症状が、これまでとどう違うのかについて解説してきた。

肺炎は、新型コロナウイルスかどうかにかかわらず、日本人にとってとても身近な怖い病気だ。現在、日本では年間で13万人を超える人が肺炎で亡くなっている(誤嚥性肺炎を含む。厚生労働省の平成29年「人口動態調査」より)。新型コロナウイルスによる肺炎を正しく恐れることができるならば、将来の肺炎対策につながる。

(ライター 伊藤和弘、図版制作 増田真一、イラスト 堀江篤史)

大谷義夫さん
池袋大谷クリニック院長。2005年に東京医科歯科大学呼吸器内科医局長に就任。米国ミシガン大学に留学などを経て、2009年に池袋大谷クリニックを開院。全国屈指の呼吸器内科の患者数を誇るクリニックに。呼吸器内科のスペシャリストとして「あさイチ」「林修の今でしょ! 講座」「名医のTHE太鼓判! 」など多くのTV番組に出演。著書も多数。

[日経Gooday2020年3月3日付記事を再構成]

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