食料備蓄足りてる? いざという時の必須4点セット災害時の栄養を考える(1)

日経Gooday

笠岡さんらが東日本大震災の避難所で食事状況を調査したところ、多くの避難所では穀類など主食が過剰に供給される一方、乳製品、肉類、野菜などおかずになる食品は不足しているところが多かった(図2)。

東日本大震災から約1カ月後に、被災したS市の69の避難所における食事供給状況を調査した結果。それぞれの項目が「不足している」「過剰にある」と答えた避難所の割合を示している(Tsuboyama-Kasaoka N, et al. Asia Pac J Clin Nutr. 2014)

災害時の栄養補給は、発災直後からの水分、そして生死を分けるタイムリミットといわれる72時間(3日)以内までは生き延びるためのエネルギーが必要だ。そのため「水」や「主食」が不可欠なのは言うまでもない。

しかし、その後4日以降は、おにぎりやパン、カップ麺などの主食ばかりでは必要なたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養が不足し、健康を損なうリスクが高まってしまう。さらに1カ月以降は、長期化する被災生活の中で、いかに栄養をとり健康状態の悪化を防ぐかという段階へ、時間の経過とともに求められる栄養も変化する(図3)。そのため、食料備蓄も単に空腹を満たす主食さえあればいいわけではなく、「栄養を管理できる備蓄」、つまり「おかず」が必要となるわけだ。

「災害時の栄養・食生活支援マニュアル」(国立健康・栄養研究所、日本栄養士会)を基に編集部で作成

「東日本大震災での食料不足の経験から、魚や野菜などがとれる『おかず』の備蓄がガイドにも追加されました。実際に私たちが分析したところ、何かしらのおかずを提供していた避難所では栄養面が改善していました。健康を損なうリスクを減らすためにも、主食だけでなく、おかずは絶対に必要です」(笠岡さん)

また、長期にわたる過度のストレスや不安にさいなまれる災害時だからこそ、温かい食事や汁物のニーズも高まる。そこで不可欠とされるのが、湯を沸かすための「カセットコンロ」などの熱源だ。水を入れると蒸気が出て温まる発熱剤と加熱用袋がセットになった食品加熱パックなども備えておくとよいだろう。

「災害時は食欲が落ち、全体の食事量が減ります。食事は栄養も大事ですが、それだけではなく、温かいものを食べてホッとする、幸せ感を感じて楽しく食べられるということがとても大切です。食欲も湧いて生きる力につながります」(笠岡さん)

笠岡さんによれば、災害時も「できるだけ日常に近い食事」に近づけることが大事だという。ビタミンなどの栄養素をとる手段としてはサプリメントも一策ではあるが、それよりも、まずは缶詰、レトルト食品などでバラエティーに富むおかずをとれるように工夫しよう。食事量が少なく、基本的なエネルギーが不足しているところに「栄養が足りないから」とサプリメントばかり補うと、サプリメントでとった栄養素の過剰症状が出る恐れもあるからだ。

「栄養が不足しがちな災害時には、ビタミンやミネラルなどの栄養素をコーティングした栄養強化米なども役立ちます。サプリメントは食事でエネルギーをしっかりとったうえで栄養バランスを補うために用いるのであればよいので、発災から1カ月以降などエネルギーが十分とれるようになったフェーズで使うほうがよいと思います」(笠岡さん)

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