「将来の備えが必要」。人生100年時代といわれるなか、貯金の必要性がよく指摘される。もちろんお金も重要だが、もう一つ考えなければならないのが「健康の貯金」だ。特に20~30代から減少が始まる筋肉の「残高アップ」は待った無しだ。今ならまだ十分に間に合う! 最新研究から最強の体をつくるファクトフルネスな健康術を導き出した。この記事では、筋トレ効果を最大限に高める「高たんぱく食=筋肉食」のポイントを紹介しよう。
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厚生労働省が定めるたんぱく質の食事摂取推奨量60g/日に対し、成人男性の実際の摂取量は平均70g程度。大半の人が摂取量をクリアしているように見えるが、「筋肉組成に十分なたんぱく質を取れていないケースも実は多い」と、筋肉合成とたんぱく質に詳しい立命館大学スポーツ健康科学部の藤田聡教授は指摘する。
■特に朝食のたんぱく質量が足りていない!
原因は“隠れたんぱく質不足”だ。これまで筋肉量の維持には、1日の総摂取量が重要であるとされていたが、最新の研究で、3食のなかで偏ったたんぱく質摂取をすると、総量が足りていたとしても筋肉量が低下するということが分かってきた。また、筋トレ後48時間は通常よりも多量のたんぱく質摂取が必要になる。誰もがたんぱく質不足の可能性があるのだ。
1食につき20gずつの摂取が理想だが、「特に朝食のたんぱく質量が圧倒的に足りていない」(藤田氏)。体内では筋肉が常に分解されながら、新たに合成されている。たんぱく質が不足した時間があると、筋肉の再合成ができずに、筋肉量が減ってしまう。実際に藤田氏の統計によると、朝食のたんぱく質が不足している人が多かった。
たんぱく質源の王道は肉や卵だが、さらに筋肉合成がはかどる朝食向きの食材もある。重要なのはたんぱく質の「質」。しっかり選べば、いつもの朝食が“筋肉合成ブースト食”へと進化する。
「朝食に乳製品」で筋合成のスイッチオン

キーワードは「ロイシン」。食事から摂取すべき必須アミノ酸と呼ばれる栄養素のうちの一つだ。ロイシンは筋肉合成の“スイッチ”を入れる物質として注目されている。筋肉の合成は細胞内のシグナル伝達に関与する「mTOR」によって促進される。ロイシンはこれを活性化する効果があるという。「血中のロイシン濃度がある程度上昇することで、筋肉の合成が始まるということが分かってきた」(藤田氏)。
血中のロイシン量を一気に上げる“特効薬”は乳製品だ。たんぱく質の一種「ホエイ」を含んでおり、体内への吸収が速いのが特徴。同量のミルクと大豆由来のプロテインを摂取した場合、1時間後の血中ロイシン濃度は1.5倍近い値になるという実験結果もある。ヨーグルトや牛乳を朝食に取り込むだけで、睡眠時に分解優位になっている体の筋合成を一気に合成優位に転換できる。「脂肪はたんぱく質の吸収を阻害するため、低脂肪の商品が望ましい」(藤田氏)という。
【ヨーグルト】
牛乳より吸収が速いといわれている。白い部分がカゼイン、上澄みに現れる透明な液体がホエイだ
【チーズ】
チーズはホエイの一部を取り除きカゼインを固めたもの。吸収が遅くロングテールで血中たんぱく質濃度を支える
【高たんぱく食】
たんぱく質の総量を増やす場合は、なるべく脂質を避けて肉や卵、ブロッコリーなどの高たんぱくな食材を取り入れる
【牛乳】
乳たんぱく質のホエイとカゼインを含む。100g当たり3.3gのたんぱく質摂取が可能だ
「間食」で必要なたんぱく質総量の補給を
筋トレや運動の効果を最大化するには「間食」も重要だ。激しいトレーニング後は48時間もの間、筋肉の合成レベルが高まっているため、通常よりもたんぱく質の必要量が多いからだ。