ESも自己分析もいらない? 何みるか採用担当の本音第2回・企業の採用担当覆面座談会(下)

2020/3/2
グラフィックレコーディングは園木優美子さん(武蔵野大学工学部環境システム学科4年)が作成
就職活動の経験者なら思ったことがあるかもしれない。就活って化かし合いだな、と。お互いに目に見えない仮面をかぶった会話に終始し、企業の採用担当者が本当はどう思っていたのか最後までわからなかったなんてことも少なくない。いったい本音はどうなのか。匿名による採用担当者らの「覆面座談会」で、就活生の素朴な疑問について語り合う。

2020年1月末、3人の採用担当者を招いた第2回の覆面座談会。後半のテーマは「エントリーシート(ES)」と自己分析だ。就活生の頭を悩ませる第一関門というべきものだが、出席者からは「通年採用になるとESは不要になるかも」「今の就活でなされている自己分析はいらない」といった意外な声が飛び出した。

【出席者】
Aさん 金融機関の30代男性。営業を経て人事部門に10年在籍。
Bさん 素材メーカーの40代男性。営業などを経て人事部門に13年。
Cさん 食品メーカーの30代女性。研究開発を経て、2年前から採用担当。
司会はU22編集長の安田亜紀代。

――ESにはどんな質問を入れていますか。

Aさん 当社はオーソドックスで、ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)、志望動機、興味のある分野などです。何万件とエントリーはあるものの、(金融業界全体の)人気が低下している危機感もあって、回答するのにあまり負担がかからないものにしています。

Bさん 化学メーカーって学生の認知度が低い。だから面接は、当社に入って自分の希望が実現できるというイメージをもってもらえるようにしたいんです。ESは面接でこちらが伝えたい内容を考えるための材料にしたいので、今年は「20年後のありたい姿」など抽象的なことを聞いています。

Cさん ここ3年は質問を毎年変えて、実験しています。学生はESを書くためにそれなりの時間を使っている。ものの考え方や、大切にしていることなどがわかるようなものを考えているつもりです。(上手な切り返しを求める)「大喜利」のような質問も入れていますが、昨年のテーマはひねりすぎてあまりうまくいきませんでした。

――Cさんの会社は志望動機は聞かないんですか。

Cさん とても下世話な例えになりますが、就活って(ネット上で恋人を募集し合う)「出会い系サイト」に登録しているようなものだと思うんです。そこで出会った登録情報しか知らない相手に、いきなり「なんで私がいいの?」と(志望動機を)聞くのはヘンですよね。普通はどんな食べ物が好きかとか、そういう話から始まっていく。

ES、ウェブテスト、学歴でみえるもの

――ESを廃止する会社もあります。「そもそもESは必要か」との議論もありますが、どう思いますか。

Cさん 当社では志望してくれた学生全員に会うことが物理的にできないので、やはり選考の第1段階としてのESが必要になります。ただ今後(多数の学生への対応が一時期に集中しない)通年採用が進んでいくとしたら、いらなくなるのかもしれません。

Bさん 当社のエントリー数だと、面接に進む人数を何か違う形で少し絞り込めば、ESはなくてもいいかもしれません。エントリー数がここ数年は落ちているので見直してもいいかなと思います。

――Aさんの会社では多数のESを効率的に評価するために人工知能(AI)などは使っていますか。

Aさん 試験的に使っています。過去に内定した人のESを学習させて、ESにランク付けをしています。まだテスト段階なので、それで不採用にはしていません。

――エントリーの際に性格や能力をみるウェブテスト(適性検査)を実施されていると思いますが、その結果はどのぐらい重視していますか。

Bさん ウェブテストは社員も受けているので、それが参考になります。当社でうまく能力を発揮できている社員の数値をみて、それに近い学生を優先して、説明会の早い日程を案内しています。

Aさん ウェブテストは参考情報です。面接の際に当社の仕事に堪えうるかちょっと心配だなと感じたときは、テストを参照します。ストレス耐性が低いといった結果が出ていたら、次の段階に進まない判断をすることもありますね。入社後に仕事が合わず心の病気などになってしまったら、本人にとってもよくないですから。

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自己分析と志望理由は結びつけなくていい