ラグビーにビール、ハイネケン旋風 19年売れた商品
2019年「日経POSセレクション売上NO.1」決定
19年に日本中が熱狂したイベントといえば国内初開催となったラグビーW杯。日本が初のベスト8に入り、国中が歓喜に包まれた。その恩恵を受けたのが、ラグビーW杯のワールドワイドスポンサーであるハイネケン(オランダ)のビールだ。
通常、ビール類の売り上げは8月にピークを迎えるが、日経POS情報によると、同社の「ハイネケン」は同年9月以降も売れ続けた。10月には来店客千人当たり販売金額が前年同月比4倍となり、「瓶入りプレミアムビール」部門でのシェアも68.5%と2位のサントリービール「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム」に54.6ポイントの大差をつけた。
ラグビーの強豪国が多い欧州では、応援するチームの勝利を祈り、試合前からビールを飲む。試合中はもちろん、試合後もビールを飲みながらラグビーの話をするのが定番だ。
ハイネケンを国内で製造販売するキリンビールは、日本でもラグビーファンのすそ野を広げようと容器にラグビーW杯仕様のデザインを採用したほか、「にわかでいいじゃないか。ラグビーワールドカップ」というメッセージを掲げて、ライトなファン層の獲得を目指した。
そうした取り組みが奏功し、W杯期間中はビールを飲みながらラグビー観戦を楽しむ、にわかファンが急増しビール消費が拡大。大会の盛り上がりにも大きく貢献した。
W杯終了後、ハイネケンの売り上げは落ち着いていたが、ラグビーの国内リーグが開幕すると再び上昇。2.9ポイントに縮まっていた2位との差が20年1月20日の週には9.7ポイントに広がった。キリンは「今後も、スポーツにはハイネケンという訴求を続ける」という。今年は東京五輪・パラリンピックが開催される。思惑が当たれば、売り上げの一段の飛躍も可能だ。
■家でも「小倉トースト」
「コメダ珈琲店」を展開するコメダホールディングスと製餡(あん)業界の老舗、遠藤製餡(東京・豊島)が共同開発した「コメダ特製小倉あん」が「その他スプレッド」部門で1位となった。コメダの人気メニュー「小倉トースト」が家庭で再現できるとの投稿がSNSで相次ぎ、大ヒットにつながった。
「スプレッド」とはジャムのようにパンに塗って食べる製品。あんのスプレッドはこれまであまりなかったが、コメダが全国展開を進めるにつれ、「名古屋めし」と呼ばれる小倉トーストが広く知られるようになる。同社はコメダと交渉し、共同開発という形で18年3月に発売。日経POS情報によると、19年の来店客千人当たり販売金額は前年同月比3倍前後で推移する人気ぶりだ。
SNS上では「コメダ珈琲」だけでなく「コメダ特製小倉あん」と商品名のハッシュタグがついた再現写真が多数、投稿されている。あるタレントはコメダが店頭で販売する食パンとコーヒーを購入し、自宅でモーニングを完全再現した様子を公開して話題になった。
再現熱はコメダの別メニューにも広がりを見せる。コーヒーや紅茶にあんを入れた「小豆小町」に挑戦する投稿が相次ぎ、遠藤製餡では小倉あん入りコーヒー「小豆小町 葵」を発売した。
小売店も人気に目を付けた。ジャム売り場に加え、バターやマーガリンの棚にも置くようになった。SNSでは「どこで買えるのか」との消費者の問いに売り場の様子を投稿し取り扱いをアピールするスーパーもある。
同社はこの余勢を駆って、ジャムのように家庭の定番商品化を目指す。
■筋トレが追い風に
19年にスーパーやコンビニエンスストアの店頭で目立ったのが、たんぱく質を手軽に補給できる食品だ。健康維持に欠かせない重要な栄養素との認識が浸透し、積極的に取る人が増えたのを受け、飲料や菓子、ヨーグルトやシリアルなど多様な商品が登場した。
NHKのテレビ番組「みんなで筋肉体操」が人気を集めるなど筋トレブームの広がりや、24時間営業のフィットネスジムの普及により日常的に運動に励む人の増加が需要を後押しした。
粉末を溶かす手間がいらずそのまま飲める乳飲料である明治の「ザバス MILK PROTEIN脂肪0」シリーズは、これをチャンスととらえた。新商品攻勢でスポーツ競技に取り組む主要顧客に加え、健康維持に重きを置く顧客層にもアピールした。
まずは飽きずに飲み続けてもらえるようバナナ風味など味のバリエーションを増やした。さらに860ミリリットル入りの大容量タイプを追加してヘビーユーザーに対応。女性向けに、ビタミンB群と鉄分を配合した「ザバス MILK PROTEIN STYLE BODY」も発売した。
日経POS情報によると、19年のシリーズ全体の来店客千人当たり販売金額は18年のほぼ3倍。現在販売中の12種類の商品のうち、「ザバス MILK PROTEIN脂肪0 ココア風味」は「紙パック入りココア・チョコレート飲料」部門で、「同 ヨーグルト風味」は「その他乳飲料」部門でそれぞれ売り上げ1位となった。
「ココア風味」は18年秋からコンビニで取り扱いが始まり、顧客拡大に一役買った。「ヨーグルト風味」は、すっきりした味わいが人気だ。
対象は食品、日用品など約265万品目に及びます。店舗から日次でデータを収集し、最短2日で全国や地域別の販売動向を把握できます。また、日々発表される新製品を約2000に分類しており、容量やフレーバー(風味や香料)ごとに価格や販売数量を追うことも可能です。
「日経POSセレクション売上No.1」は日経POS情報の各分類でその年に最も売り上げの多かった商品を選出しています。メーカーは使用料を払えば、他社商品との違いを訴える手段として商品パッケージや店頭での販促物などの広告に専用エンブレムを使えます。
[2020年2月12日付 日本経済新聞朝刊]
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