アニメ『ランウェイで笑って』 少年誌×服飾の異色作
1月期のテレビアニメ『ランウェイで笑って』。原作は猪ノ谷言葉が2017年5月から「週刊少年マガジン」(講談社)で連載する同名マンガ。少年誌での掲載でありながら「ファッション業界」をテーマにした異色作として、連載スタート直後から注目を集め、熱く切ない人間ドラマとこれがデビュー作とは思えない猪ノ谷の高い画力で、男女問わず幅広い人気を得てきた。

パリコレのモデルを目指すものの低身長がゆえに周囲から諦めろと言われてしまう藤戸千雪と、貧しい家庭に育ち環境に恵まれないなかでもファッションデザイナーになることを諦めない都村育人。そんな2人が高校のクラスメートとして出会い、最初はぶつかりながらも友情を育み、共に一途に夢へとまい進する姿を描く。
監督に就いた長山延好は原作を読み「まず驚いたのは主人公である育人と千雪に対する自分との重なりでした」と話す。
「自分自身アニメ業界の荒波でがむしゃらに仕事してきたということや、アニメ業界を目指すうえで、また実際に仕事してきたことで見えてくる自分の"才能"という壁、そういった局面がステージは違えど2人の境遇と重なり、感情移入して作品に入り込んでしまいました。育人と千雪という2人の主人公がつながりつつも違う分野で夢に向かって突き進み、悩み、葛藤し、そのなかで出会いがあり、救いがあり、戦いがある。とても熱意のこもった作品だと感じましたし、読み終わった後は心地よい余韻と共に前に進もうと頑張りたくなる、そんな前向きな作品だと思いました」(長山監督、以下同)


原作コミックスは現在14巻まで進んでおり、連載中であるため、長山監督がアニメ化において一番悩んだことは「物語の長さ」だったという。「アニメ作品は限られた尺のなかでどこまでのストーリーを表現するか決めなければなりませんが、原作のどのシーンも各キャラクターが成長するうえで重要なため省略することが難しかった」そうで、シリーズ構成の待田堂子(『らき☆すた』『昭和元禄落語心中』など)らに加え、原作の猪ノ谷も打ち合わせに参加し検討が重ねられた。
映像表現にも力が入る。「繊細な感情表現をアニメーションとしてどこまで再現するか、原作でのコマ割りの演出をなるべく拾い上げ原作から印象が大きくずれないよう気を付けました。表情やしぐさ、物語の重要なアイテムである服、そこに色が付き、動き、キャラクターに命が吹き込まれる――。マンガとはまた別の表現で、うまくアニメに落とし込んでいると思います」
「1話は千雪と育人、2人に対する最初の前進となるお話です。"モデル"と"ファッションデザイナー"、違う分野ではありつつも同じ業界を夢見る2人が、初めてお互いを認識し、刺激し合い化学反応を起こしていく。停滞している主人公2人がどのようにして一歩を踏み出し物語が始まっていくのか、まだ不安定な2人ではありますが温かい目で成長を見守っていただけたらと思います」
(日経エンタテインメント!2月号の記事を再構成 文/山内涼子)
[日経MJ2020年2月7日付]
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