渋滞なしのアリの行列 マラソン大会に応用した数学力使える数学(前編)

サイン、コサイン、タンジェント、みんな役に立つ

――そんなに!? もはや全部数学じゃないですか。じゃあ、わたしがよくわからない「サイン、コサイン、タンジェント」もどこかで活躍してる?

「活躍しまくりです。サイン、コサイン、タンジェントは波のかたちをしているもの、つまり、ゆらぎのある対象を計算するのに使うんです。だから携帯電話の電波、それに地震や津波などの防災分野、さらに全地球測位システム(GPS)などはすべてサイン、コサイン、タンジェントで計算しています」

――まさか、私のスマホをあのサイン、コサイン、タンジェントが支えていたなんて……。

「数学って裏方なんですよ。みなさん難しい数学は学校を卒業して社会に出たら使わないじゃないかとおっしゃるんだけれど、実は全部数学で考えていますっていうことがすごく多いんです」

――でも先生、そういうものをつくる人だけが数学を知っていればいいんじゃない? 私に必要なのかな。

「知らなくてもいいんだけど、原理を知っておくと全然違うと思うんですよ。例えば、どこかに行って急にGPSが入らなくなったとします。数学の知識があると、なぜ入らなくなったかなと考えられる。コンピューターが壊れたときも、少し数学がわかればどういうエラーなのかな?と考えられる。原理を少しだけ知っていれば、事故を防いだり、だまされにくくなったりしますよね」

「それに、さやかさんのお仕事にも数学は大活躍するんだけどなあ」

――ちょっとその話詳しく聞きたいです。

「さやかさんは講演活動をしながら原稿を書いたり大学院に通ったりしていますよね。そのスケジュール管理だって数学だし、講演と執筆と研究をどのくらいの比率ですると10年後の利益をどれだけ上げられるか、といったことも、数学的に考えられる。いわゆるポートフォリオです」

――うわ、私の収入も上がっちゃうかもしれない。(マネジャーさんに向かって)私たち、数学やりましょう。もしかして、いわゆる文系の仕事でも、数学って必要なんですか。

「インターネット上に面白いサイトがあるんです。微分積分とか、関数とか、数学の何をわかっていなければならないのかを職業ごとに示しているんです。ちなみに、数学の最も幅広い分野を知っていないといけないのは物理学者。でもね、例えば文章を書くのが仕事の新聞記者は必要とされる数学の範囲が意外と広いし、大工や造園業の人も数学を仕事に使います」

「つまり、数学を学ぶのをやめてしまうと、職業の選択肢が狭まってしまうことがある。反対に、ある職業に将来つきたいなら、数学のこの分野は勉強しておいたほうがいい、という説明もできる。そうすると、とたんに数学を勉強するモチベーションがあがるでしょ?」

――この話、中学生や高校生のころに聞きたかったなあ。どうして学校では「数学は社会に出てからも役に立つ」って教えてくれなかったんだろう。

「それには理由があるんです」

(後編に続く)

西成活裕さん
1967年東京都生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、工学博士。山形大、龍谷大、ドイツのケルン大学理論物理学研究所を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター教授。専門は数理物理学。様々な渋滞を分野横断的に研究する「渋滞学」を提唱し、著書「渋滞学」(新潮選書)は講談社科学出版賞などを受賞。2007年JSTさきがけ研究員、2010年内閣府イノベーション国際共同研究座長、文部科学省「科学技術への顕著な貢献 2013」に選出、東京オリンピック組織委員会アドバイザーにも就任している。趣味はオペラを歌う事、合気道。著書に『とんでもなく役に立つ数学』(KADOKAWA)、『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』(かんき出版)などがある。
小林さやかさん
1988年生まれ。「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」(坪田信貴著、KADOKAWA)の主人公であるビリギャル本人。中学時代は素行不良で何度も停学になり学校の校長に「人間のクズ」と呼ばれ、高2の夏には小学4年レベルの学力だった。塾講師・坪田信貴氏と出会って1年半で偏差値を40上げ、慶応義塾大学に現役で合格。現在は講演、学生や親向けのイベントやセミナーの企画運営などで活動中。2019年3月に初の著書「キラッキラの君になるために ビリギャル真実の物語」(マガジンハウス)を出版。2019年4月からは聖心女子大学大学院で教育学を研究している。
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