経営危機にあったユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)をV字回復に導いたことで知られるマーケティングのトップランナー、森岡毅氏に大学生2人がインタビューした。2017年に独立し、様々な企業の改革に携わる森岡氏の過去は、意外にも自分に自信がなく、コンプレックスを持っていたという。個人も会社もマーケティングの力でよみがえると確信する森岡氏が説く、人生のマーケティング戦略とは。(聞き手は、東京大学3年の伊豆田みゆさん、法政大学2年の遠矢壮一郎さん)
ちょっとだけ得意なことを見つけて磨く
遠矢 森岡さんは学生時代に自分自身のブランド戦略を考えたんですよね? 実は僕も最近20歳になったタイミングで自分の強みを考えてみたのですが、自信を持って言えることがあまりありません。
森岡 私だって、自信なんて全然なかったです。ちょっとだけ得意なところを磨いて必殺技に伸ばしていくことが勝ち筋だと思うんですよ。磨き始めるまでは皆不安です。今の段階で必殺技を持っていなきゃいけないとは思わない方がいいです。そう考えてしまうとしんどいですから。
私の学生時代、ちょっとだけ得意だったことはまず数学。もう一つは、人から反感を持たれても自分の意見を人に対してズガーンと言うこと。でも、本当に数学の才能に恵まれた人に比べたら「ちょっとだけ」なんです。
それで、理系の中に飛び込んでも大成しないと思ったので、神戸大学経営学部を受けたのが最初の分かれ道。その次は、自己主張の強い性格なので日本企業ではつぶされると思い、そんな人間でも受け入れてくれそうで、かつ数学が生かせるところと考えて、外資系のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)を受けました。
私よりも数学ができる人は掃いて捨てるほどいましたがビジネスの実戦経験を積みながら、マーケティングの中に数学を取り入れられる人はあまりいなかったから私はレアな存在になれたのだと思います。
遠矢 100分の1×100分の1で1万人に1人の人材になれる、みたいなことですね。
森岡 その通りです。極端な話をすると、自分自身は変わらなくても、文脈を変えれば違って見える。絵は変わらなくても額縁を変えるという話です。つまり自分の評価や特徴は、「文脈」が決めるんです。「文脈」を決めるということがキャリアを選ぶということになるのです。