財布も文具も自在 廃材をオシャレ雑貨にリメーク

島津冬樹さんが世界中で集めてきた段ボールで作った財布類
島津冬樹さんが世界中で集めてきた段ボールで作った財布類

段ボールなどの廃材を財布やバッグにリメークする「アップサイクル」が新たなファッションとして注目されている。リサイクルに独自のファッションやアートの感覚を付加するという発想で、廃材が持つおしゃれなデザインや質感を生かして雑貨などとして再生する試み。社会の環境意識や節約志向の高まりも人気を後押ししている。

段ボールを世界で収集

赤、黄、緑など鮮やかな原色の財布――。これらはすべて島津冬樹さんが世界中から集めた段ボールを加工して作った作品だ。「段ボールのデザインや肌触りには独特の風合いや温かみがある。自分の手元に来るまでにたどってきたストーリーを想像するだけでも楽しい」とその魅力を語る。

段ボールで財布を制作する島津さん(東京都内のアトリエで)

価格は長財布が2万円、財布が1万5000円、コインケース7000円など。様々な言語で描かれたロゴや名称、カラフルな図案が不思議な味わいを醸し出している。

材料は実際に野菜や果樹、海産物などが入っていた段ボール。それを定規で折り曲げ、ビスや接着剤を使いながら器用に財布に加工する。東京都内の自宅兼アトリエには30カ国・地域以上で見つけてきた約500個の段ボールが山積みにされている。

島津さんの作品はウェブサイト(https://shop.carton-f.com/)や国立新美術館のミュージアムショップ、海外のセレクトショップなどで販売されている。「世界で一つしかないし、感覚が斬新で格好いい。ものを使い捨てにしない発想にも共感が持てる」(30歳代男性)と国内外で人気だ。段ボールを財布にリメークする方法を指導するワークショップも実施している。

島津さんが段ボールのリメークを始めたのは多摩美術大学2年生だった2009年。きっかけは、知人からもらった財布が壊れたので近所のスーパーで手に入れた段ボールで自分なりの財布を作ってみたこと。1年も持ったうえ、友人からも「作ってほしい」と依頼されるようになった。

モロッコで段ボールを収集する島津さん(左、2016年)

さらに初の海外旅行で米ニューヨークに出かけた時、世界中から集まってくる様々な種類の段ボールに魅せられた。「結局、ほとんど観光もせず、夢中で段ボールの写真を撮っていた」という。以来、アジア、中東、欧州、アフリカなどへと段ボールを拾う旅を続けるようになる。「テロ対策に敏感なパリの街角では不審者と間違われて逃げ回ったこともある」と苦笑する。

大学在学中に始めた段ボールのリメーク活動に企業も注目。ビームスとコラボして段ボールから作った財布を販売するイベントも実施した。大学卒業後、電通にアートディレクターとして就職するが、15年に独立。段ボールアーティストとして活動を続けている。

環境志向も人気後押し

アップサイクルとは単に素材を再利用するリサイクルとは異なり、より次元や価値の高い商品に再生するという概念。クリエーティブ・リユース(創造的再利用)とも呼ばれる。発祥は欧米。自動車のシートベルトや自転車のチューブを財布やバッグにリメークするスイスのブランド「フライターグ」がすでに有名だ。

島津さんが世界を巡って集めてきた段ボール(東京都内のアトリエで)

日本でも島津さんのほか、使い古した消防服をバッグなどにリメークする「モデコ」、シートベルトやテント生地などを雑貨や文具にリメークする「ニューズド」などのブランドが登場。アップサイクルの動きが広がっている。

近年、ファッション業界では英高級ブランド「バーバリー」が売れ残った自社商品の廃棄をやめ、再利用や寄付に切り替える方針を打ち出すなど「サステナブル(持続可能性)」への取り組みが活発になっている。消費者の環境意識や節約意識の高まりに応じた動きだ。ファッションの楽しみ方や意味合いも時代のニーズに応じて変化している。

(編集委員 小林明)

[日本経済新聞夕刊2020年1月18日付]

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