豪州熱波の悲劇 大量死するオオコウモリの親子たち

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/1/27
ナショナルジオグラフィック日本版

昨年12月に、豪メルボルン郊外のヤラ・ベンド公園で気温43度を超える暑さのなか、息が詰まりそうなほどのかたまりになってあえぐハイガシラオオコウモリの群れ。公園では、3日間でこの群れも含めて約4500匹のコウモリが死んだ(PHOTOGRAPH BY DOUG GIMESY)

オーストラリアで2019年12月、メルボルンを襲った猛烈な暑さに耐えられず、ハイガシラオオコウモリがバタバタと死んでいった。クリスマス前に最高気温43℃超を記録、3万匹のハイガシラオオコウモリがねぐらとしているヤラ・ベンド公園では3日間で集団の15%にあたる4500匹が死んだ。

オーストラリアの春に当たる9月と10月は、コウモリにとって出産の時期だ。体長30センチほどのオオコウモリは、北で冬を越した後、一斉にこの公園へ戻ってくる。メスはいつも通り子どもを産んでいたと、生物学者のスティーブン・ブレンド氏は言う。ブレンド氏は、ヤラ・ベンド公園の大集団を含め、ビクトリア州のハイガシラオオコウモリを調査している。

史上最も暑く、最も乾燥した夏

悲劇は、この公園のハイガシラオオコウモリだけにとどまらない。国中の野生生物が、この過酷なまでの暑さに苦しめられている。一部の動物たちにとっては、火で焼かれるのにほぼ等しい。オーストラリアには大小さまざまな固有種が生息しているが、その希少な動物たちが、前代未聞の熱波と森林火災の犠牲になっている。

今季は、オーストラリアの観測史上最も暑く、最も乾燥した夏となった。地球温暖化に伴って、大規模火災が増え、森林火災のシーズンも長期化している。

ハイガシラオオコウモリは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで危急種(VU)に指定されている。ヤラ・ベンド公園だけではない。「アデレードはもっと深刻です」と、ブレンド氏は言う。

ヤラ・ベンド公園で救助したハイガシラオオコウモリの子どもを胸に抱くタムシン・ホガース氏(PHOTOGRAPH BY DOUG GIMESY)

南オーストラリア州のアデレードでは11月から1月の間に猛暑のために数千匹のオオコウモリの赤ちゃんが死んだと、ウェスタン・シドニー大学の動物生態学准教授でオーストラレーシア・コウモリ協会の会長を務めるジャスティン・ウェルベーゲン氏は語る。

1月4日、ニューサウスウェールズ州でも過去最高の49.4度を記録し、シドニー周辺の数カ所のねぐらでオオコウモリの赤ちゃんが大量死した。オオコウモリの熱中症を調査するウェルベーゲン氏らは、死んだオオコウモリの数を計算しているが、最終的な数はまだわかっていない。

オオコウモリの主な生息地であるオーストラリアの東海岸全域を襲った今夏の猛暑と大規模森林火災は、「2019年生まれのコウモリを全滅させる恐れがあります」と、ブレンド氏は懸念する。今季誕生したオオコウモリの80%が10月に生まれ、まだ小さくて体力がついていないところへ、熱波と森林火災が発生した。

酷暑の一日

焼けるような暑さのなか、オオコウモリは過酷な一日を過ごさなければならない。夜の間に蜜と果実でお腹を満たしたコウモリたちは、日が昇る午前5時半にはねぐらの木に戻る。午前8時になると、ねぐらの中はかなり暑苦しくなる。コウモリは翼をあおいで涼もうとするが、ずっとそうしていると疲れてくる。昼頃までにはすっかり体力を消耗しているが、気温の上昇は止まらない。コウモリの呼吸は荒くなり、やがて脱水状態に陥る。

ナショジオメルマガ
注目記事
次のページ
木からバラバラ落ちる悲劇
ナショジオメルマガ