感染予防やアレルギー抑制も ビフィズス菌が秘める力

2020/1/17

O-157から守るビフィズス菌も

ビフィズス菌は、以前は乳酸菌の一種と考えられていたが、実は生物学的には、乳酸菌とは異なる菌。いずれも主なエサは糖や水溶性食物繊維をはじめとする炭水化物で、自然界にも多い乳酸菌は比較的酸素のある小腸に多く「乳酸」を作るが、酸素を嫌うビフィズス菌はヒトや動物の大腸の奥深くにいて「酢酸」を多く作るのが特徴だ。

「酢酸は短鎖脂肪酸の一種で、強力な殺菌作用があり、大腸内を有害な菌がすみにくい環境にする。また、便をつくる食事由来物質などが通過する大腸表面の細胞(上皮細胞)の増殖やこの細胞を覆って守る粘液を増やす作用で、防御を強固にし、病原菌が作る毒素や炎症性の物質が体内に侵入しにくくする」と松井教授。実際、2011年に理化学研究所が発表した動物による試験では、酢酸を多く作るビフィズス菌の摂取で腸管出血性大腸菌O-157による感染を防ぐことが確認された。

腸内を無菌状態にしたマウスに、(1)ビフィズス菌を抜いたエサ、(2)酢酸生成量が少ないビフィズス菌入りのエサ、もしくは(3)は酢酸生成量の多いビフィズス菌を加えたエサのいずれかを与えた後、腸管出血性大腸菌O-157に感染させた。(1)と(2)のマウスはどちらも感染後死亡したが、(3)の酢酸生成量が多いビフィズス菌を与えられた群のマウスは感染後も生存した。(データ:Nature. 2011 Jan 27;469(7331):543-7.)

ほかにも、特定のビフィズス菌を摂取することで期待できる広範な効能に関する研究が進んでいる。

生後すぐの赤ちゃんの腸を守るビフィズス菌

ビフィズス菌を筆頭に、腸内で多様な細菌が集団で生息する腸内細菌叢が注目されている。早稲田大学と東京大学が2016年に共同で発表した12カ国のヒト腸内細菌叢データの比較解析によると、腸内細菌叢の組成は国ごとで大きく異なり、日本人の腸にはほかの国の人より明らかにビフィズス菌が多いことが確認された。

健康な日本人106人の腸内細菌叢のメタゲノム解析を行い、ビフィズス菌の占有率について、他の11カ国のデータと比較解析したもの。他の国に比べ、日本人の腸にはビフィズス菌が多かった。(データ:DNA Res. 2016 Apr;23(2):125-33.)

これを受け、長年ビフィズス菌の機能研究に携わってきた森永乳業基礎研究所の清水金忠所長は「ビフィズス菌は日本人が腸を守るため、なかでも抵抗力の低い赤ちゃんを守るために、代々受け継いできた菌なのかもしれない」と推測する。

ビフィズス菌は乳児期に最も多く、加齢に伴い徐々に減る傾向がある[注1]。これは授乳期間中、母乳に含まれるオリゴ糖をエサにビフィズス菌が増殖するからだが、「母乳には殺菌作用のあるリゾチームという成分も含まれるのに、なぜか赤ちゃんのおなかにすむビフィズス菌には効かない。まるで、いてもいいよと母乳が認めているかのようだ」と清水所長。

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