クラウド調達が生む世界 「カメ止め」映画の常識覆すクラウドファンディングが変える社会(1) MotionGallery代表 大高健志

私が映画に魅せられた一人であることもあってか、モーションギャラリーでは映画プロジェクトの成功が目立ちます。その中には、映画制作やその上映にとどまらない、本当に素晴らしいインパクトを社会に与えたものがたくさんあります。

社会の景色を変えるプロジェクト

例えば、「地方の映画館やミニシアターを守る」もしくは「つくりたい」という内容のプロジェクトでは、

・京都市の出町柳に映画×本屋×カフェが融合した新しい映画館「出町座」をつくる
・誕生から20周年を迎えた大阪市のミニシアター「シネ・ヌーヴォ」のリノベーション
・茨城県那珂市瓜連にみんなが気軽に集う劇場「あまや座」を!
・兵庫県豊岡市の「豊岡劇場」再出発
・埼玉県川越市の「川越スカラ座」存続のためのデジタル映写機導入
・広島県尾道市の「シネマ尾道」存続のためのデジタル映写機導入

といったように、全国各地でプロジェクトが立ち上がり、目標達成金額を集めて成功に至っています。

新しい映画体験を創造して、新たな映画ファンを創造するためのプロジェクト「日本で唯一のドライブインシアターを浜松で復活させます!」では、最終的には目標金額120万円を上回る約136万円を集めて、3日間限定で静岡県浜松市にドライブインシアターを復活させました。

クラウドファンディングで京都・出町柳エリアの商店街に新しいカルチャー発信地をつくる試みも(京都市)

クリエイティブな活動に対して、例えば「その活動や作品が持つ、そもそもの社会的価値とは何であるか」を問い直すことは、これからさらに重要になってくると思います。

信じられないほどのスピードで社会が変わり続けている現代では、どうしても結果とその結果がもたらす未来に目が向きがちです。ですが、未来を先んじて考えるには、歴史を紡ぎあげ「発酵」させる作業が必要となります。それはまさにクリエイティブな活動が行っている作業であり、価値でもあります。昨今ビジネスパーソンにも必要といわれ始めた「アート思考(アートシンキング)」の源泉でもあります。

社会に価値を創出する力

その町の歴史を振り返り、根源的価値を再定義し、空き家のリノベーションで町をアップデート(更新)する活動、過去の知識と未来の知識をつなぐ書籍、社会を様々な視座から見つめオルタナティブ(代替)な見方を提示する映画・アート・舞台など、クリエイティブな活動にはそんなふうに社会に価値を創出する力があります。

だからこそ、短期的な結果が求められる既存のビジネスベースでの資金調達は難しいのです。そもそもの「社会的価値とは何であるか」を問い直し、その過程や制作背景を社会に広く示して応援を集めるクラウドファンディングは、短期的な結果だけでは評価できない活動の価値を社会に広めるためにも、これからさらに重要になると考えています。

社会に大きなインパクトを与えられるような活動がもっとたくさん生まれてほしい、そしてそれらが生まれやすくなる環境を整えたい――。こうした「クリエイティブな仕事を応援したい」という私の気持ちは、「それらの可能性の幅をもっと広げていきたい」ということに他なりません。お金の流れに地殻変動を起こし、社会を変えるようなインパクトを与えられるような活動を、これからも続けていきたい思っています。

次回は、映画以外のジャンルにも広がるクラウドファンディングの世界をご紹介します。

大高健志
モーションギャラリー代表。1983年東京生まれ。07年早大政経卒、外資系コンサルティング会社に入社。主に通信・メディア業界で、事業戦略立案、新規事業立ち上げ支援、マーケティング、オペレーション改善などのプロジェクトに携わる。10年東京芸大大学院映像研究科に進学。映画製作を学ぶ中で、クリエィティブと資金とのより良い関係性の構築の必要性を感じ、11年モーションギャラリー設立。さいたま国際芸術祭2020キュレーター、映画プロデューサー。https://note.com/takeshiotaka

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