日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/1/12
バイオダイナミック農法を行うタブラス・クリーク。しばしば干ばつに見舞われるこの地域で、持続可能なワインづくりに重点を置いている醸造所の一つだ(PHOTOGRAPH BY DAVID PAUL MORRIS, BLOOMBERG/GETTY IMAGES)

リファインド・ハンドクラフテッド・スピリッツはワイナリーから調達した残り果汁を使い、パソロブレスの地域性を反映したジンをつくっている。有機栽培のワイナリー、カストロ・セラーズが作ったベテル・ロードは、ワイナリーと同様、ジンの蒸留にも持続可能性を取り入れている。ジンは完成したばかりだが、現在、樽熟成も試みている。カルワイズ・スピリッツがつくる「ビッグ・サー・ジン」はセージ、イェルバ・サンタ、ゲッケイジュ、エルダーベリーといった地元のハーブを香り付けに使用している。

ひねりの効いたクラフトビールも

ほかの都市と同様、パソロブレスもクラフトビールの流行に乗ろうとしている。ただし、独自のひねりが加えられている。オーク樽で熟成するバレルハウス・ブルーイングの「サルベージ・ド・ロブレス」シリーズには、地元の果物が使用されている。シュナン・ブラン種のブドウが入ったシュナン・ブロンド、プルオット(スモモとアンズの交配種)を使ったワイルド・ダップル・ファイアなどだ。

ジュニパー、カルダモン、レモン、オレンジ、コリアンダー。カストロ・セラーズのジンはこれらの植物で香り付けされている(PHOTOGRAPH COURTESY LUKE UDSEN, CASTORO CELLARS)

夫婦で営むシルバ・ブルーイングは樽熟成のセゾンビールをつくっている。ウエスト・サイド・ストンプはクロスグリとグルナッシュ・ブラン種、サンソー種のブドウをミックスしたサワーロゼだ。ファイアストーンのロザリーもロゼビールだが、こちらは使用済みの穀物をウシの飼料やピザ生地に再利用している。

このようにパソロブレスの樽はいつも満たされており、コミュニティーを重視する精神が蒸発する気配はない。タブラス・クリークのワインメーカーであるニール・コリンズ氏は、パソロブレスは持続可能性を第一に考える若く情熱的なワインメーカーや蒸留者を積極的に受け入れてきたと話す。それだけでなく「この町の古い人たちは、知識や知恵、ユーモア、そして大量のウイスキーを喜んで分け与えてくれました。それらすべての一員であることを光栄に思っています」

アルタ・コリーナのブドウ園。約12ヘクタールの農園で複数の品種を有機栽培し、1房ずつ手作業で収穫している(PHOTOGRAPH COURTESY LUKE UDSEN, CASTORO CELLARS)
【旅のヒント】
行き方:パソロブレスはサンフランシスコから車でアクセスできる。サンルイスオビスポの空港からも50キロほど。

過ごし方:現地に到着したら、車を手配しよう。ブレイクアウェイ・ツアーズ、アンコークト・ワイン・ツアーズ、トースト・ツアーズはオーダーメードのツアーを用意しており、一般開放されていないワイナリーに入ることもできる。

滞在:ピッコロは新しいブティックホテルで、居心地の良いスイートルームと屋上のバーがおすすめ。アレグレット・ビンヤード・リゾートはホテル内にちりばめられた美術品のコレクションが有名だ。アルタ・コリーナは宿泊できる「トレーラー・ポンド」をブドウ園に併設。トレーラーを改装した5つの客室が池のそばに並び、穏やかな水面を眺めながらゆっくりできる。共用の調理場でほかの滞在者と交流したり、キャンプファイアを囲みながらボードゲームで遊んだりするのもいい。

体験:マルガリータ・アドベンチャーズのツアーに参加すれば、エンシェント・ピークス・ワイナリーとその周辺でアグリツーリズムを体験できる。ブドウの木を使ったジップラインや、サンタ・マルガリータ湖でのカヤック、野生動物の観察ツアーもある。

(文 DANIELLE BERNABE、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2019年12月22日付記事を再構成]