先達、夫にもらった、宝物のアドバイス

ダイバーシティーについて、陶山さんは経団連の活動などで長年親交があった吉田晴乃さんの言葉を借りて話を継いだ。「よろいを着ていちゃだめよ。あなたたちは本当にチャーミングに、しなやかに、そしてしたたかにがんばりなさい」。吉田さんはそう話していたという。米国などでキャリアを重ねた後、英国の通信会社の日本法人社長を務めた吉田さんは今年6月に55歳で急逝している。

「日本の社会は男性同士のあうんの呼吸で物事が決まってきたけれど、女性が入るだけであうんが成り立たなくなる。そこを見える化することによって、無駄に気づいたり、違う視点で考えられるようになったりする。それが本当にダイバーシティーだと思うのです」と陶山さんは語る。

だからこそ、後輩の女性には「まずはバッターボックスに立ってみてと伝えたい」という。

後輩の女性には「まずはバッターボックスに立ってみて」と背中を押す

「女性はまだ自己評価が低いです。でも、せっかくチャンスをもらえるなら、ノーと言わずに手を挙げてほしい。チャンスはいつ来るかわかりません。私の場合、総合職に転換するという大きなチャンスが来たのは38歳。かなりの遅咲きです。何歳からでもスタートできるんです」

後輩に意識して伝えている、もう一つの点は、女性が活躍することをマクロの視点でとらえてほしいということだ。

「自分の所属する部署とか、会社の単位で考えていると、自分が働くことのインパクトなんて感じられないと思うのですが、女性が社会で活躍し続けていくことで、社会が変わっていくはずだと考えてほしいのです」

陶山さんには長女が小さかったころから続けている習慣がある。どんなに仕事や子育てが忙しくても、自分だけの時間を持つことだ。「夫のアドバイスでした。すべてにおいて余裕がないとうまくいかない。余裕って何かといえば、自分だけのために時間を持つことだと。そういうことをさせてくれる夫でした」。図書館に行き、勉強したり雑誌を読んだり、時にはただぼーっとして過ごす。夫は4年前、59歳で他界した。

リーダーの立場になったいま、陶山さんはケネディ元米大統領の「中間管理職と真のリーダーの微妙な半歩の違いは、プレッシャーのもとで優雅さを保てるかどうかだ」という言葉を座右の銘にしている。夫の言ったように自分の時間を持ち、吉田さんがのこした言葉の通り、優雅にしなやかにしたたかに。これらの教えはそのまま、これからダイバーシティーに富んだ社会をつくっていく、すべての女性にとって価値のあるメッセージだろう。

(藤原仁美)

<<(上)腰掛けのはずが大震災で転進 女性初の社長までの道程

「キャリアの原点」記事一覧

マネジメント層に必要な4つのスキルを鍛える講座/日経ビジネススクール

会社役員・経営幹部の方を対象とした、企業価値を高める経営の実務に役立つビジネス講座を厳選

>> 講座一覧はこちら

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら