ライブグッズは「金の卵」 自ら企画・演出ツールにも

日経エンタテインメント!

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ライブの楽しみの1つに、会場で売られている「グッズ」を挙げる人も多いだろう。一方、アーティスト側にとっても、ライブのビジネスとしての成功はグッズの売り上げにもかかっている。重要度が増すグッズはクオリティーが向上し、種類も多様化している。アーティストが自ら企画・プロデュースに参加した商品も多い。「金の卵」ともいえるライブグッズの最新動向を紹介しよう。

タオルやバッグなど様々なグッズが会場で売られている(複数のアーティストグッズを組み合わせた合成写真)

2019年、ぴあが首都圏に住む18~69歳の男女を対象に行った調査結果によると、回答者の37.3%、つまり3人に1人以上がライブグッズを購入。その年間購入費は平均2万2386円になるという。

CDなどパッケージの売り上げが落ち込むなか、「ライブ収入」の重要性が高まっているのは周知の事実。しかし、ライブを開催するためには会場費はもちろん、大がかりになればなるほど増える機材セット費、そしてスタッフの人件費など様々な費用が発生する。コンサートの運営やPRを請け負う、全国各地のプロモーターへの支払いも必要となる。

だが、「グッズの売り上げは、基本的にアーティストや事務所に入る。ライブ収入だけでは赤字でも、グッズが売れることで興行として成り立つケースも少なくない」(業界関係者)。18年11月には、エイベックスと芸能事務所LDHが合弁会社「HI&max」を立ち上げ、会場での販売事業に参入。会場での観客の声を積極的に取り入れることで、商品開発や新しい販売手法も検討していくという。

ライブグッズと聞いてまず思い浮かべるものといえば、Tシャツやタオル、そして応援のためのうちわといったものだろう。ただ、これらはいわゆる“記念品”で、ライブ以外の場では使わないという人も多かったはずだ。だが、昨今ではグッズの種類の幅が広がり、商品としての質も格段に向上。アーティストが自ら企画・プロデュースに参加した商品も多い。ソニーミュージックグループ内外の様々なアーティストのグッズ制作を請け負う、ソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)の田中佐知子MD営業部部長は、昨今の傾向を次のように語る。

売れ筋は記念品から日常使いへ

ぴあ総研調べ。19年4月30日発表

「今は日常的に使ってもらえるようなものを、という要望が多い。例えば、Tシャツであれば、生地から作ったり、普段使いできるようアーティスト名やツアー名をあえて小さくしたり。ファッションのトレンドにも敏感で、大きなサイズをゆったりと着る“ビッグシルエットTシャツ”を用意するアーティストも増えています」

今年4年に1度のグレイテスト・ヒッツライブ「DREAMS COME TURE WONDERLAND 2019」を行ったドリームズ・カム・トゥルーは、ケイタマルヤマとメゾンミハラヤスヒロとのブランドとのコラボTシャツを販売。このほかにも、ファッション系ではブルゾンなどのアウターや、指輪やイヤリングといったアクセサリー系を販売するアーティストが増加。三代目 J SOUL BROTHERSの登坂広臣は、自身プロデュースの香水を販売している。

今、制作が増えていると田中氏が挙げるのは、アクリルスタンドだ。これは、底面があり、立てることが可能な平面フィギュア。ソニー・ミュージックソリューションズでは、もともとアニメ作品のグッズとして制作していたが、音楽系アーティストにも提案。いまでは広く普及し、ジャニーズ事務所、LDHなど様々なアーティストが採用するようになっている。

面白いのは、アクリルスタンドを家などに飾るのではなく、持ち歩くファンが多い点。レストランでの食事や旅行先の風景などと一緒に撮影し、SNSに投稿するのだという。「ライブグッズが日常生活に入り込むことでアーティストとファンの距離を縮め、結果、ロイヤリティを高める重要な役割を担うようになっています」(田中氏)。

グッズは、ライブを楽しむためのツールとしての大きな役割も担うようになっている。その代表が、応援グッズの定番であるペンライトだ。かつては、1色のみの発光、もしくは手動で色を切り替えるものが多かった。だが、今では赤外線などで、観客が持つペンライトの色を自動制御できるように。多くのアーティストが、曲の雰囲気や、照明などに合わせて色を変更するなど、演出の一部として取り入れるようになっている。嵐のコンサートでは、客席1席ごとにセンサーシールを貼り付け、細かくコントロール。ブロックごとに色を変えて複雑な模様を浮き上がらせたり、ウェーブのように変化させる演出も可能だ。

ライブを盛り上げるアイテムとして、独自のグッズを用意するアーティストも多い。例えば、ゆずのタンバリン。コンサート内で、観客の皆と一緒に、タンバリンを使ったダンスを踊るコーナーが定番となっている。変わり種では、池田貴史のソロプロジェクト、レキシの“INAHO”がある。これは、まさに稲穂を模したグッズ。代表曲『狩りから稲作へ』という曲で、この稲穂を掲げて盛り上がるのだ。11月からスタートした全国ツアーでは、新グッズとして“光る!INAHO”を発売している。

ライブをより楽しむための重要な役割を担うようになったこと、また確実に手に入れたいというファンが多いことから、ECサイトでグッズを事前販売するアーティストも増えている。奥田民生、LiSAなどが所属するソニー・ミュージックアーティスツの公式オンラインショップ「ROCKET-EXPRESS」では、事前購入したグッズを、ライブ会場で受け取れる「会場受取」を導入。送料や手数料がかからず、確実にグッズを入手できると好評だ。

(日経エンタテインメント!編集 羽田健治)

[日経エンタテインメント! 2019年12月号の記事を再構成]

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