教師になるチャンスはこれからもあるだろう。でもアイドルは今しかできない。大学を卒業する直前の2月、ソロアイドルとしてデビューした。
寺嶋さんは「アイドルなのに、しっかりしてますね」とよく言われる。ライブ会場で国語教育の重要性を訴えたり、言葉の大切さを親子で学ぶイベントに参加したりする。ゆるキャラが好きで、全国のゆるキャラと一緒に地方活性化ための行事にも参加する。コンサートでは「早稲田大学出身、真面目なアイドル、真面目にアイドル」とあいさつする。自分にしか表現できない、ちょっと知的なアイドル像を模索する日々だ。
木下綾菜さんは高校1年生、16歳のときにアイドルになった。千人以上が参加したオーディションを勝ち抜き、松田聖子さん、早見優さんほか大物アイドルを多数輩出したサンミュージックからデビューした。同社にとって20数年ぶりのアイドルで、相沢秀禎会長自ら命名した「さんみゅ~」のメンバーに選ばれた。

デビュー後、メンバーの多くが通信制の高校に移る中、木下さんは通っていた県立高校から大学に行くと決めていた。高校時代は新曲のプロモーションなどで、1週間まるまる授業に出られない時もあった。地方遠征の時はメンバーより早く飛行機に1人で乗り、定期試験に駆けつけることも珍しくなかった。「高校時代が1番、睡眠時間が短かったかな」と振り返る。
アイドルという仕事はずっと続けられない。木下さんには漠然と意識する仕事が別にあった。父親と同じ観光業だ。大学も観光関係の学部を選び、旅行業務取扱管理者の国家資格も取得した。
「さんみゅ~」はデビュー曲が岡田有希子さんの「くちびるNetwork」のカバー曲だったため話題となり、鳴り物入りデビューと注目された。ただ当時は、その後8年間も人気が続くとは思わなかった。
木下さんは2019年3月、大学を卒業した。就活の時期になり、周りがエントリーシートだ面接だと、ざわざわしているのをみると、さびしい気持ちもあったが、自分はアイドルとしてやっていこう、この世界で、大学で学んだことを生かしていこうと決めた。観光業界への道はもう頭になかった。高校、大学と7年間、普通の学生生活を垣間見ることができたのはいい経験だったと思っている。
「さんみゅ~」は惜しまれつつ、20年3月に解散する。今後は単独でのアイドル活動が中心になるが、ファンとの交流イベントを企画したり、テレビの旅行番組に関わったり、アイドルという仕事の幅を自分なりに広げていきたいと考えている。
大学卒業を機にアイドルも卒業する例も少なくない。人気グループ「tipToe(ティップトゥ)」のリーダー花咲なつみさんは20年3月に大学を卒業し、一般企業に就職する。アイドル時代の経験は自分の武器になると、就活でもアイドルであることを隠さなかった。