女性アイドルの進路 芸能界に残るか、新天地目指すか

2019/12/3
女性アイドルたちが選んだ進路とは(さんみゅ~の木下綾菜さん)
女性アイドルたちが選んだ進路とは(さんみゅ~の木下綾菜さん)

世はアイドル戦国時代だという。活動中のアイドル数は千組を超え、人数は1万人以上と過去最多だ。アイドルを女性のキャリアの選択肢としてみると、様々な進路や可能性が開けてくる。

橋本ゆきさんがアイドルになったのは、東京大学に入学した直後だ。所属するグループ「仮面女子」は、CD売り上げランキングで1位を獲得したこともある。芸名は桜雪、中核メンバーだった。東大生アイドルとしてメディアに登場することも多く、討論番組やニュース番組からも出演依頼がきた。

仮面女子のライブは平日夕方から2回、ほぼ毎日ある。3限の授業が終わるとトイレでステージ衣装に着替え、4限の授業が終わるや秋葉原に直行した。派手な衣装で授業を受けていれば、変人扱いされるまでに時間はかからない。ライブが終われば反省会、新しい曲や振り付けの練習だ。そのまま楽屋で大学の課題リポートを仕上げて仮眠、早朝から開いている銭湯に行って大学へ。目の回るような日々だったが、なんとかアイドルと学業を両立させた。

就職活動の時期が近づき、両親に「いつまでアイドルをやるつもりなの」と言われた。大学の友人たちは当たり前のように、有名大企業へと進路を決めていく。橋本さんも就活をした。フジテレビから報道の仕事で内々定を受けたが、どこか違和感があった。

変人とまでいわれながら人と違うことを4年間やり抜いたのに、人と同じような就職をしていいのか。在学中も東大生の先入観、イメージ、常識を打ち破ったという自負があった。ここで辞めるのはもったいない。アイドルを続けよう。東大生はアイドルのキャリアを選んだ。

寺嶋由芙さんは早稲田大学に入学した19歳の時、アイドルグループ「BiS」に加わった。中学、高校時代からモーニング娘やAKB48のオーディションを受けていたが、落ち続けた。寺嶋さんがアイドルデビューしたのは19歳で、ギリギリの年齢だ。20歳を過ぎると応募資格から外れるオーディションも多い。寺嶋さんはすれすれで間に合ったアイドルだった。

寺嶋さんは知的なアイドル像を模索する

BiSに加わったものの給料は出なかったので、午前中にカフェでアルバイト、午後は授業、夕方からライブという多忙な日々を送った。大学4年生の5月にグループを抜け、6月から教育実習に参加した。

実習に入ってみると、いろいろな思いが頭をよぎった。国語の教師は、アイドルと並ぶ子供のころからの夢だった。教師は子供の人生に大きな影響を与える仕事だ。本当はアイドルを続けたかった、そんな思いを引きずったままの生半可な気持ちで取り組める仕事ではない。