冬の六甲山踏破しいい湯だな 甲陽学院変わる伝統行事甲陽学院中学・高校(下) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ

「六甲山というのは、私たちにはとても身近な山なんです。ただ、毎日のように眺めている山でも、ちょっと上のほうまで登っていくと、真冬には一面の銀世界になっています。日常と非日常が隣り合っていることを感じるいい経験だとは思います」(今西校長、以下同)

ゴールの後は有馬温泉で「いい湯だな♪」

生徒会と体育科の共催の形で行われる。事前に登山委員が下見に行く。

「耐寒登山の下見は公休になりますので、昔は希望者が殺到したものです。堂々と授業をサボれるわけですからね(笑)。でも最近は希望者が減りましたね。授業を受けられなかったら困ると、本人が言うのか、親が言うのかわかりませんけれど……」

さすがに受験を控えた高3は参加しない。6人程度の班を編成し、班単位で登山する。ゴールまでの間に数カ所の「関門」が設けられ、通過時間の幅が設定されている。関門には登山委員の生徒と教員がいて、各グループの通過時間を記録する。

全行程を踏破する時間によって優勝グループが決まる。ただし、速ければいいというわけではない。「シークレット・タイム」という秘密の時間があらかじめ決められており、それにいちばん近いタイムでゴールしたグループが後日表彰されるのだ。

レクリエーション的な意味合いだけではない。シークレット・タイムは例年の平均ゴール時間を参考にしており、これが各グループのペースメーカーの役割も果たす。近年では、ゴールした後、有馬温泉の日帰り風呂で冷えた身体を温めてから帰路につく生徒や教員も多い。

「ちょっと前に、登山の途中で体調を崩した生徒がいました。リタイアして学校に戻ろうと促したのですが、どうしてもゴールまで行きたいというんです。聞けば、友達といっしょに有馬温泉の宿を予約しているんだとか。近年ではそうやって、有馬温泉に一泊するのを“伝統”という生徒たちもいるんですよ。伝統でもなんでもないんですけどね。そもそも有馬温泉の宿って決して安くはないですよね。親御さんがお金を出しているんでしょうけれど……」

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