黒スーツ着ない自分色就活 企業も見たい本当のあなた

2019/11/24

カメラマンのインターンをしている石黒さん自身は、就活スーツは持っておらず、自分の好きなスタイルでインターンに通っている。でも、現場で必要となればジャケットを羽織るし、自分なりに考えているという。

津田塾大3年の古賀要花さん(撮影=津田塾大学)

「そういえば、学生時代に服装についてきちんと学ぶ機会って、ほとんどないですよね」と指摘したのは、津田塾大の3年生、古賀要花さん。古賀さんは「どんな格好でも自由にすればいい」という考えの持ち主ではない。就活で自分らしさを出しつつも、好き放題にならないポイントをどう探すか、ふと立ち止まると分からなくなる。「服装リテラシーみたいなものを教わったことってないかもしれないです」と考え込んでしまう。

企業側に見える変化の兆し 大手も「服装自由OK」

記事に登場した学生や新卒社会人の就職先は、ITやベンチャーなど働く人の服装も自由なところが多く、確かに私服で面接に行くことへのハードルは低そうだ。では実際、ほとんどの学生が就活スーツ姿で面接や説明会に臨む大手企業はどう考えているのだろうか。

ある大手金融の人事担当者は「スーツの着用義務付けなど、服装の指定は一切していない」と明言する。それでも、ほぼ全員が就活スーツ姿で現れる。たまにノーネクタイの男子学生がいるくらいだという。

この担当者は「スーツの着用の有無で内定に有利、不利になることは絶対にありません。それよりも会社は必死でその学生の個性を見極めようとしています。もう少し、自由な格好で来てくれたほうが我々もいいのですが……」と苦笑いした。

また、数年前から「服装自由」と募集時に明記している大手広告代理店の人事担当者によると、それでも半数近くが就活スーツで現れるという。「もちろん、ほかの企業とうちを同じ日に受けていていることもあると思うので理解はしている」としつつも、「役員からは『没個性的なスーツ姿だと見分けがつかないから、私服のほうがいいんだけど』とぼやかれています」と話した。

このほか、タクシー大手は履歴書不要、服装自由という「ありのまま採用」を打ち出している。また、約2400社の中小企業が会員の東京中小企業家同友会は、「合同企業説明会には私服でお越し下さい」と明記している。

最近では、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&Gジャパン)のヘアケアブランド、パンテーンと就活サイトを運営するワンキャリアが「#令和の就活ヘアをもっと自由に」と題するキャンペーンを仕掛けた。就活はいわゆる黒髪でなくてもいいというメッセージに、企業や官庁が賛同する動きが出ている。

業務用ヘアケア商品や化粧品を製造販売するミルボンは今年の夏、学生の声をもとに商品開発などを提案するdot(東京・渋谷)に、インターンのプログラム作りを依頼した。学生が参加したいと思えるインターンを作るのが狙いだが、真っ先に提案されたことの一つが「服装を私服にすること」。実際、インターン当日に集まった学生は、クリーム色のシフォンのワンピースやピンクのパンツ、青のシャツワンピースなど思い思いの服装だった。

ただ、学生側の意識が揺れ動くのは、まぎれもない事実だ。「自由な服装だと自分らしくいられる」と言いつつも、「でも、本番の就活はやっぱりスーツを着て髪も染めなきゃいけないのかな」と話す学生もいた。

ある人事担当者は「やはり、学生さんは何かを忖度(そんたく)してしまうのでしょうね。こちらのつくり出す雰囲気が悪いのでしょうか……」と首をかしげた。

「みんなと同じ黒い就活スーツを着なかったら落とされるかもしれない」という恐怖感は学生の中に当然、あるだろう。それでも、就活スーツ姿を強要する企業はおそらく、多くはない。「私はこんな人間です」とアピールする就活の場こそ、本当はファッションで自分を表現すべきかもしれない。

(藤原仁美、桜井陽、安田亜紀代)

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