僕は若いころから、自分に対する会社の評価に疑問を抱いていました。会社は自分を正当に評価していないんじゃないか。そもそも会社というのは、社内の人間をちゃんと評価しないところではないか。そんな考えをずっと持っていました。

実際、センチュリーメディカルの経営を立て直したのに給料はたいして上がらない。自分は社内ではそれほど評価されていないんだと思いましたね。逆に会社の外の人は、自分をきちんと評価してくれているはずだ。だったら、それを確認するために会社を辞めてみよう。そう思ったわけです。

1992年の夏、45歳の誕生日の2週間ほど後でした。センチュリーメディカルの当時の社長に会社を辞める考えを伝えました。社長にしてみれば、寝耳に水、青天のへきれきだったかもしれません。

社長から報告を受けた伊藤忠の常務から電話がかかってきました。「松本君、ちょっと昼飯でも一緒に食おう」と。案の定、「松本君、辞めるな。俺のところに戻ってこい」と慰留されました。でも辞める意志は固かったので、冗談交じりに「俺のところというのは、常務にしてくれるということですか」と聞いてみました。すると「いや常務室だ」と言うので、「それなら、やっぱり辞めます」と伝えました。

こうして出向時代を含めて20年勤めた伊藤忠を退職しました。すると21社から声が掛かりました。僕のにらんだ通りでした。その中の一つが、ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル(現J&J)だったのです。

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松本晃
1947年京都府生まれ。京都大学大学院修了後、伊藤忠商事入社。93年にジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)日本法人に転じて社長などを歴任した。2009年にカルビーの会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。停滞感のあった同社を成長企業に変え、経営手腕が注目されるようになった。11年には東証1部上場を果たし、同社を名実ともに同族経営会社から脱皮させた。18年に新興企業のRIZAPグループに転じ、1年間構造改革を進めたのも話題に。

(ライター 猪瀬聖)

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