深川麻衣 感謝伝えたい、卒業記念にもらった絵

乃木坂46を卒業して3年。着実に女優としての存在感を高め、今秋はドラマ『まだ結婚できない男』に出演中の深川麻衣さん。「イラストレーターに憧れていた」という彼女が大切にしている絵や、愛してやまない文房具の魅力などを語ってくれた。
世界に1つだけの絵をインテリアに
「私がずっと大切にしているモノは、高校3年生のときに、先生からいただいた絵です。子どもの頃から絵を描くことが好きで、中学は美術部、高校は芸術科に進学したんです。そこではデザインを専攻していたのですが、卒業するときに担任の先生がクラスの一人ひとりにプレゼントしてくれたのが、絵でした。白地にオレンジの長方形が描かれていて、周りに3つの丸い模様が描かれている、抽象的ですてきな絵。もらったときは、クラスに生徒が37人いたので、コピーしたり、まとめて作ったりしたものかと思ったんですけど、裏を見たら絵の具がはみ出した跡があって、全員の絵柄が違うんです。本当に一人ひとりに絵を描いてくれたんだとわかって、すごくうれしかったです。
その絵をずっと大事にしまっていたんですけど、それじゃもったいないなと思って、あるとき、額装屋さんに持っていったんです。そこで額縁の太さや余白を決めて額装してもらって、今は部屋のインテリアにしていて。その絵を見ると、高校時代のことを思い出します。もしまた先生に会えたら、『大切に飾っていますよ』と伝えたいです」

今も絵を描くことが好きで、「イラスト旅」なるウェブ連載も行う。
「高校生のときはアクリル絵の具がメインだったんですけど、今はコピック(カラーマーカー)や水彩絵の具、水彩色鉛筆をよく使っています。画材は自分でお店に買いに行きます。子どものころから文房具屋さんが大好きで、近くを通ると入ってしまいます。東急ハンズやロフトに行くと、ついスケッチブックを買ってしまって(笑)。
最近は水彩鉛筆を見つけて買いました。水で溶いてにじませるもので、同じ黒でも濃さが違うものが何本かセットになっているんです。お店で試し描きしたら、それが楽しくて。
あと最近買ったのは、ダイモテープライター。テープにアルファベットを印字できる道具で、自分のノートに『MAI』と書いて貼ったり、砂糖の容器に『SUGAR』と書いて貼ったり。見たことがないモノを見ると、興味をそそられて買ってしまいます。


文房具の魅力は、どんどん進化して、新しいものが出てくるところ。例えば、昔ながらの万年筆でも、インクが進化してカラフルになったり、書き味の違うものがあったりするんです。万年筆自体もコンパクトなものも出て、気軽に持てるものが増えてきている。そういうふうに進化して、便利になっているところが好き。だからどれだけ文房具屋さんに行っても、飽きることがないのかなと思います」

「結婚できない女」かもしれません
10月から出演中のドラマは『まだ結婚できない男』。偏屈だけどどこか憎めない独身建築家・桑野信介を阿部寛さんが演じた『結婚できない男』の13年ぶりの続編だ。深川さんは、第1話で桑野の隣に引っ越してきたヒロインの1人、戸波早紀を演じている。

「『結婚できない男』をリアルタイムで見ていたので、続編が決定したと聞いて、いちファンとしてうれしくなりました。しかもその続編に登場人物の1人として出られるなんて。13年前、高校生だった自分は、本当に思ってもいなかったです。
戸波早紀はもともとアイドルで、今は駆け出しの女優としてがんばっている女の子です。たどってきた道のりが自分と似ているので、台本を読みながら『がんばって!』と応援してしまう部分があります。
性格は明るくて、何事にも一生懸命。ただ、悪気もなく相手がイラッとするようなことを言って、怒らせてしまったりする(笑)。桑野さんもひとクセある男性ですけど、早紀もちょっとクセが強い部分があるので、台本をいただくたびに『こういう一面もあるんだ』という発見があって面白いです」
桑野は「結婚にメリットを感じない」と考え、53年間独身を通している。深川さんはそんな男性を、どう思うのか。また深川さんが考える結婚のメリット、デメリットは?

「桑野さんの考え方は、必ずしも悪いことではないのかなと思います。最近はおひとり様専用焼き肉のお店も人気ですよね? 飲食店でも、カウンター席が増えてきた気がする。そんなふうに1人の時間を楽しめるということは、自立しているということ。人としての強さを感じて、カッコイイなとも思います。
結婚のメリットは、お互いに助け合えたり、面白いと思うことを共有できたりすること。自分が楽しいと思ったことを、相手の人も楽しいと思ってくれたら、楽しさが倍になりますよね。そういうところはとてもすてきだなと思います。
デメリットに関しては……結婚していないのでまだわからないです。それに、今はまだ希望を持っていたいです(笑)」
深川さん自身は「結婚できない女」、それとも「結婚できる女」?
「結婚願望はあります。でも仕事が楽しいので、『何歳までに』という願望はなくなってきてますね。子どもの頃は20~22歳で結婚したいと思っていたんですけど、今は『結婚したい』と思える人がいて、一緒に過ごす中で『今だ!』と思ったときがベストタイミングだと思っています。うーん、私も『結婚できない女』かもしれないです(笑)」

買い物は、慎重派になりました
16年に乃木坂46を卒業し、17年に舞台、18年に映画、19年に連続ドラマと着実に主演を重ねて、女優として注目の存在になった。自身の「進化」については、どのように感じているのだろう。
「進化できていたらいいなと思うんですけど(笑)。グループを卒業した後に『スキップ』という舞台をやらせていただいたとき、周りはベテランの劇団員の方ばかりで、私は素人に近い状態。自分の力の無さに悩んで、稽古後に電車で一緒になった粟根まことさん(劇団☆新感線)に相談したんです。『どうしたらお芝居がうまくなりますか』と聞くと、粟根さんは『積み重ねが大事だよ』と。『今、言われて意味が分からないことも、経験を積んでいくなかでわかっていくよ』と言ってくださったんです。それが今も、すごく心に残っていて。
確かにやっているときは無我夢中で、その間にどこが進化しているかなんてわからないですけど、お仕事を重ねていくなかで、『こんな役もやってるんですね』と言葉をかけていただくこともあって。そういう言葉を聞くと、自分の引き出しが少しずつでも増えているのかな、と思えてうれしいです。ハッキリした進化ではないかもしれないけど、地に足をつけて前に進んでいけたらと思っています」
モノとの向き合い方にも、そんな深川さんの成長が見える。
「前はわりと衝動的に買ってしまうことがあったんですけど、最近ではしっかり吟味して、本当に必要かどうかを自問自答するようになりました。あと、家にはお気に入りのモノだけを置きたいと思うようになってきましたね。使うかもしれないと思いながらとりあえず取って置いたものとか、いつか着るかもと思って取っておいた服がいっぱいあったので。モノを整理整頓して、シンプルに心地のよい生活をしたいと思うようになっています。
今、欲しいものですか? うーん……あ、冷凍オムライス! 最近、『ポムの樹』(オムライス専門店)の冷凍オムライスが市販されていると聞いたんですけど、見たことがなくて。私、作るのも食べるのもオムライスが大好きなので、見つけて食べてみたいです(笑)」

1991年生まれ、静岡県出身。2011年に「乃木坂46」の1期生オーディションに合格し、数多くのヒット作と共に活動しグループをけん引する存在となる。女優業に専念するべく2016年にグループを卒業。17年に『スキップ』で舞台初主演。18年の初主演映画『パンとバスと2度目のハツコイ』でTAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。19年は『日本ボロ宿紀行』で地上波連続ドラマ初主演。その他の出演映画に『愛がなんだ』(19年)、『空母いぶき』(19年)。ドラマに『プリンセスメゾン』(16年)、『まんぷく』(18年)などがある。
『まだ結婚できない男』
ルックスも収入も人並み以上なのに、偏屈な性格ゆえに結婚できない男・桑野信介。53歳になった彼が出会ったのは、仕事人間で未婚の弁護士・吉山まどか、カフェ店長の田中有希江、そして隣の部屋に引っ越してきた駆け出しの女優・戸波早紀。3人の女性の中に、信介の結婚相手はいるのか? 脚本・尾崎将也 演出・三宅喜重、小松隆志、植田尚 チーフプロデューサー・安藤和久、東城祐司 出演・阿部寛、吉田羊、深川麻衣、塚本高史、咲妃みゆ、平祐奈、阿南敦子、奈緒、荒井敦史、小野寺ずる、尾美としのり、稲森いずみ、草笛光子 2019年10月8日より、カンテレ・フジテレビ系にて毎週火曜夜9時から放送中。
(文 泊貴洋、写真 藤本和史)
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