食感は5種類、自由自在 台所番長が選ぶ大根おろし器
合羽橋の台所番長が料理道具を徹底比較
合羽橋の老舗料理道具店「飯田屋」の6代目、飯田結太氏がイマドキの調理道具を徹底比較。今回は、大根おろし器マニアとしてテレビでも活躍する飯田氏が、フワフワからジャキジャキまで、好みの食感におろせる大根おろし器を検証。自分好みの食感になる大根おろし器の見極め方を紹介する。
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こんにちは、飯田結太です。サンマやサケなどの焼き魚、鍋物などがおいしい季節ですね。それらの料理に添えるとより味わいが増す、スーパーサブのような役割を担っているのが大根おろしです。ここ2年ほど、かき氷を筆頭に、フワフワ食感、軟らかい食べ物がブームなのですが、大根おろしもフワフワな食感が人気です。飯田屋に訪ねてくるお客様からも、「軟らかな食感におろせる大根おろし器はどれですか」という質問をよく受けるようになりました。
そこで今回は、200種類以上の大根おろし器を検証してきた大根おろし器マニアの私が見つけた、好みの食感を出すための大根おろし器の選び方をご紹介します。
大根おろしの食感は5種類あります。口どけが良く、口の中に入れるとすぐにとけてしまう「フワフワ」、ふんわりしているけれど、大根の繊維を感じる「フワシャキ」、口の中にいれると、シャキッとした口当たりがあり、後からふんわり溶けていく「シャキフワ」、歯でかむとシャーベットのような食感がある「シャキシャキ」、そして、大根のみじん切りに近く、みずみずしさをしっかりと感じられ、かむほどにジューシーなうまみがあふれてくる「ジャキジャキ」です。
5種類の食感は、大根おろし器の目(おろし金の刃部分)の選び方で変わってきます。つまり、おろし器の目を見分けられれば、自分好みの食感が得られるのです。
では、大根おろし器にはどのような種類があるのか。大根おろし器は大きく2つに分けられます。昔から業務用とされてきたのが、受け皿がない「板タイプ」。もう1つが、おろし金と受け皿がセットになった「箱タイプ」です。
板タイプは、おろし金の裏表で目の大きさが違うものが多く、使い分けができ場所をとらないので収納に便利なことからプロに使われていました。しかし、おろすときに入れ物が動かないように押さえながら力を入れておろす必要があります。
一方、箱タイプは、目は1種類ですが受け皿が付いているので、板タイプよりも力を必要とせず、スピーディーにおろすことができます。そのため、最近は業務用としても板タイプよりも箱タイプを選ぶ人が増えてきました。
現在の主流は、スピーディーに、力をあまり入れずに大根をおろせる箱タイプ。今回は箱タイプを中心に食感別で大根おろし器をご紹介します。
食感別の見分けポイントは「刃の角度」
おろし器の目の形状で、大根おろしがフワフワになるか、シャキシャキになるかが分かります。目の形状の見方は、自分の顔の正面におろし器を持ちます(下写真参照)。このとき、おろし器の目(刃)が、自分に向かって垂直に立っているとフワフワ食感に、目が斜めになっているとシャキシャキ食感になります。
なぜかというと、自分に向かって目が垂直に立っているということは、目(刃)が鋭角だということ。鋭角なものほど大根の繊維をスパッと細かく切るので口どけが良くなります。反対に、目が斜めに並んで見えるのは、目が鈍角。そうすると、大根の繊維は残りやすくなり、シャキシャキな食感になるのです。
また、大根おろしは力が必要で疲れると思っている方に選ぶときに見てほしいポイントがあります。それは、おろし器の面の形状。おろし器の面が山型にカーブしているものと、谷型になっているものがあります。
頂点がセンターにある山型の場合、大根を置くと中心の1点だけが面に接地します。おろし器に接地しているのが中心の1点だけだと、抵抗力が少なく、あまり力を入れなくても大根をおろすことができます。
反対に、谷型の場合は、最初に接するポイントは両端の2点になります。山型よりも手にかかる負担は大きくなり、力を入れていく必要があります。
谷型の場合は力が必要ですが、そのぶん、山型よりも早くおろし終わるというメリットがあります。力をあまり必要としないでおろしたいか、すばやくおろしたいかで選ぶのもひとつの方法ですね。
おろし器の面と目の形状を見極めることができると、自分好みの大根おろしを作ることができます。
5つの食感を実験。最適なおろし器は?
●圧倒的なフワフワ感
おろし面は山型、目は鋭角。おろしはじめにあまり力が要らず、フワフワな大根おろしを作れるのが、アーネストの「ふわっとおろしてみま専科」です。もともと、同社の「楽々オロシてみま専科」という大根おろし器が人気で、フワフワ食感をけん引してきたといっても過言ではないほどでした。
しかし、長さ約30cm、幅約12.5cmもある大きいサイズのため、1~2人暮らしの場合は大きいと感じる方もいました。そこで、サイズを小さめに、長さ約20.5cm、幅約10.5cmとコンパクトにしたのがこちら。
目はひと目ずつ鋭利な本目立てをしているので、切れ味が長く続きます。ふわふわで口どけが良く、あっという間に溶けてなくなる食感は一度味わうとファンになりますよ。
●誰もがなじんだ、フワシャキな大根おろし
大根おろしのフワシャキな食感は、誰もが一度は味わったことがあるのではないでしょうか。「大根スリスリBOX」は、軟らかくて口どけが良いうえに、少し繊維を感じる大根おろしが作れるおろし器。フワフワすぎるのは物足りない、舌に少し食感が残るくらいがいいという人におすすめです。
●ほんのり辛みあり、シャキフワ食感
口に入れると、シャキシャキとした舌触りがあって、その後でふんわりと溶けていく。そんな食感を味わえるのが、19年10月発売の「職人技おろし」。オールステンレス製の大根おろし器は珍しく、価格は高めですが、おしゃれなうえ衛生面でも問題なし。通常、滑り止めのために受け皿の底に脚が付くことが多いのですが、これは脚がなく、滑り止めマット付き。ここが私の気に入っている部分です。脚は使っているうちにすり減ってきて機能しなくなるもの。ならばデザインを重視して脚をつけず、付属のマットで滑り止めをしようというアイデアがいいですね。
●大根おろし好きにおすすめシャキシャキ食感
大根本来のみずみずしさと味わいをダイレクトに感じるのが、シャキシャキとした食感です。辛みも少し強めに出るのが特徴。なめこおろしなど、大根おろしを酒のつまみとして使いたいときにはこれがおすすめです。
●みずみずしいジャキジャキ感、キング・オブ・鬼おろし
おろしというよりは、みじん切りに近く、それだけでもサラダのように食べられるのが鬼おろし。数ある鬼おろし器のなかでも、抜群にコリコリとした歯ざわりが楽しめて、水分も少なめに仕上がるのが、萬洋の「竹製鬼おろし」です。目の部分がなだらかな山型なのが特徴。これでおろす鬼おろしは、かんだときに大根のうまみがじゅわーと口の中に広がって、一度食べるとはまる人が続出。最近は、フワフワ食感の次に人気があり、特にアジア圏の人にファンが多いようです。
たかが大根おろし、されど、大根おろし。自分好みの大根おろしを作るなら、道具選びからこだわってみてはいかがでしょうか。今までの料理の味わいがより深くなると思いますよ。(談)
(文 広瀬敬代、写真 菊池くらげ)
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