茨木さんは瀬戸内海に面した兵庫県姫路市で育った。プログラミングを学ぶため神戸高専の電子工学科に入学。在学中から「自分の力を試したいから」と、4年生の夏にはふらりと家出して上京するなど行動派だった。

家出から戻った後も、たびたび東京へ赴いてはプログラミングのイベントに顔を出し、友人を増やした。そして卒業とともにアルバイト先だったIT企業に入社した。

仕事では妥協しない。在籍したIT企業でのことだ。大手電機メーカーと共同で構築したインターネットの接続機器が動かず、IT企業側のミスだと指摘された。だが茨木さんは引き下がらず、電子工学の知識を動員して無線による計測装置を自前で製作。メーカー側のミスを見事に証明してしまった。

IT技術に対する嗅覚は人一倍だ。世界中のウェブアプリケーションや仮想通貨「イーサリアム」に使われるプログラミング言語「GO言語」について、「実行速度が速く書きやすい。バランスのとれた言語だ」(茨木さん)と早くから注目。国内初の解説書の執筆に携わっている。

論理的な文章を書くことは得意で、「高専時代にA4判10枚分ほどのリポートを毎週課されていたからですかね」と笑う。

IT企業2社を経て、「自分でやりたい仕事を追い続けたいから」と起業を決意。大手電機メーカーに勤めていた松江高専出身の芳田昌彦さん(28)を口説き落として右腕とし、創業した。

いかりを模した同社のロゴは、海と縁がある茨木さんのために、妻で石川高専出身の柏夏美さん(28)がデザインした。

現役の高専生も参加 全国にネットワーク

創業当初、ヘマタイトの事業を支えたのは、SNS(交流サイト)などでつながった高専生。茨木さんは「インターネットさえあれば、全国どこでも世の中に役立つ仕事ができるぞ」と呼びかけ、高専生にアルバイトでプログラミングなどを手伝ってもらった。

茨木社長のメッセージは社名の由来にもつながる。ヘマタイトとは「赤鉄鉱」。いわゆる鉄鉱石の一種で、地球上に最も多く存在する鉱石とも言われる。車や船など「何でも作れる」素材だ。

ヘマタイトの社員はほとんどが元高専生だ

高専生ネットワークのつながりから社員に迎え入れた人材もいる。