昼寝前にはコーヒー!? 仕事の効率上げる意外なコツ
ネスレ日本は2019年3月に30分単位で仮眠できる「ネスカフェ睡眠カフェ」(東京・品川)をオープンし、8月に「ネスカフェ睡眠カフェ×ゼロジム 出張眠らせ隊」を始動した。出張眠らせ隊は、インストラクターが企業に出向いて入眠から覚醒まで、昼寝をサポートする約30分のプログラムを提供する。出張眠らせ隊が実際に企業の昼休みに行った昼寝のプログラムを取材し、その中から会社で昼寝をするときに役立つコツを紹介する。
短時間の昼寝で午後の睡魔を撃退
昼食後に睡魔に襲われ、眠気で仕事に集中できないことがある。そんな眠気を解消するのに有効なのが、短い仮眠(昼寝)だ。仮眠をとると頭がすっきりして、午後の仕事の効率が上がったという経験を持つ人もいるだろう。
仮眠室を設置しているヤフーなど昼寝を推奨している企業もあるが、一般企業ではまだまだ昼寝は一般的ではない。そこで、うまく仮眠をとることで社員を元気にするという目的で出張眠らせ隊が活動を開始した。出張眠らせ隊のサービスは、NPOまちづくり大井、ネスレ日本、疲労回復専用ジム「ZERO GYM」を運営するビジネスライフが共同で行っている。仮眠前にコーヒーを飲んですっきりした目覚めを後押しするネスレ日本の取り組みと、ビジネスライフが考案した"昼寝の質を高める運動"を組み合わせ、東京・大井町駅周辺の企業に出向いて上手な昼寝の方法を教えるプログラムだ。
コーヒーに含まれるカフェインは中枢神経を刺激するため眠気覚ましのイメージが強く、「寝る前に飲まない方がいい」と思っている人も多い。ところが、コーヒーをうまく使うことで短時間の昼寝からすっきり目覚めることができるという。カフェインが体内に吸収されるのは摂取から約30分後なので、仮眠前にコーヒーを飲むと目覚めるころにちょうど覚醒効果が表れ、シャキッと目覚めて午後の仕事に向かえる。また、入眠前後のストレッチを組み合わせることで、心地よく眠りに入り、すっきり目覚めることができるという。
オフィスの休憩室や自分のデスクで上手に仮眠をとり、午後からの仕事のパフォーマンスを上げるために、出張眠らせ隊のプログラムは参考になりそうだ。
ポイントは、昼寝前のコーヒーとストレッチ
プログラムで推奨している昼寝のコツ1つ目は、昼寝前のコーヒーの摂取だ。広島大学が大学生10人を対象に次のA~Eの5パターンに分けて行った研究[注1]では、昼寝をしないと、昼寝をした場合に比べてその後の眠気が増し、記憶テストの成績が落ちることが分かった。
【B】昼寝のみ
【C】昼寝後に洗顔
【D】昼寝後に強い光を浴びる
【E】昼寝前にコーヒーを飲む(カフェイン摂取量は200mg、コーヒー100mL)
※昼食(11:40~12:15)後、コーヒー摂取(12:35~12:40、Eのみカフェイン入り・それ以外はデカフェ)、昼寝(12:40~13:00、Aのみ休憩)、眠気の自己評価と記憶テストのセット(合計5分)を12回実施(13:02~14:02)。自己評価と記憶テストのセットは昼寝前にも3回行った。
20分昼寝をすると成績の低下度合いが少なくなるが、ただ昼寝をするだけでなく「昼寝前にコーヒーを飲む」「昼寝後に顔を洗う」「昼寝後に強い光を浴びる」などすると、成績低下がさらに防げた。中でも最も効果が高かったのは「昼寝前にコーヒーを飲む」ことで、眠気も成績低下はほとんど見られず、眠気防止効果も少なくとも実験を行った1時間は持続したという。
[注1]Hayashi M,et al.Clin Neurophysiol. 2003;114(12):2268-78.
もう1つの昼寝のコツはストレッチだ。午前中の仕事モードを引きずったままだと交感神経優位の緊張状態でスムーズに入眠しにくいため、昼寝前には緊張をほぐし眠りやすくするためのストレッチを行うといい、と疲労回復専用ジム「ZERO GYM」では勧めている。
立ちっぱなしや座りっぱなし、パソコン作業が多い人などは、猫背になったり背骨が固まったり、肩や首回りの筋肉が固まっている可能性もある。凝り固まった部位をほぐして緊張がゆるむことで、副交感神経が優位になって自然な眠気が誘発されるという。ここで紹介する4種類のストレッチを全て行っても5分程度で終わる。
昼寝後のストレッチですっきり
自分のデスクで仮眠をとるときは、昼寝用の枕やひざ掛け、アイマスクなどを使い、体に違和感のない体勢を探して仮眠に入ろう。ストレッチで体はほぐれているから、心をリラックスさせるイメージを思い浮かべよう。仕事のことを頭から離し、「とにかく寝る」と決めるのがポイントだ。
出張眠らせ隊のプログラムでは、インストラクターが「足の指先、足の裏、かかと……」と足元から手の指まで一つずつ体の部位を挙げ、意識して体の力を抜くように促した。「体が床に沈み込み、頭がゆるんで脳の重さが昼寝枕にもたれかかるように」「緑の森の中にいるイメージで」「すべての力を大地に預けましょう」と静かに語りかけ眠りを誘った。
昼寝の長さは15~20分程度に抑えるのも大事だ。睡眠にはいくつかの段階があるが、深い眠りに落ちてしまうと覚醒が難しくなる。眠気を取り払うには、15分程度の短時間の仮眠が最も有効だからだ。デスクで仮眠をとる場合はスマホのバイブレーション機能などを使ってアラームを設定しておこう。
目が覚めたら覚醒後ストレッチで体を目覚めさせれば、眠気が解消され午後の仕事に気持ちよく取り組める。覚醒後ストレッチは3分程度でできる。
このプログラムを体験した不動産会社社員からは「午後イチはやるべきことがあっても眠くなっていたが、昼寝をしたらすっきりした。この状態で仕事をしたら集中できそう」「インストラクターの声を聞きながら力を抜いていくと、体がだんだん重くなって気づかないうちに眠りに落ちていた。今日の方法でこれからも昼寝を続けたい」といった声が聞かれた。
昼に仮眠をとれば午後も集中力が続き、効率よく仕事を片付けられそうだ。質の高い仮眠で仕事の効率アップを目指そう。
(ライター 加納美紀、図版 増田真一)
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