ポケモンが歓迎 カルチャーで訪日客招く大丸心斎橋店

日経クロストレンド

アールデコ様式の名建築を復元

「世界が憧れる、心斎橋へ」をストアコンセプトに、これまでにない「未来に向けた新しい百貨店」を目指して開発された大丸心斎橋店。そのコンセプトを最も体感できるのが、国内外のコスメブランドを集積した1階フロアだ。同店西阪義晴店長が「圧倒的な美の空間」と形容するように、天井や柱、エレベーターホールには、近代建築を象徴するクラシカルな装飾が広がる。モダンな鏡面天井と組み合わせた空間に足を踏み入れると、不思議と気分が高揚してくる。「歴史ある建築と内装を国内外のお客様にゆっくり見てほしい。その中で人々が集う雰囲気こそが、大丸心斎橋店の新たな世界観を醸し出している」と西阪店長は胸を張る。

建て替えに当たっては、86年の間に経年劣化した建物をいかに違和感なく再現し、将来にわたって安全を確保できるかという点に重きを置いた。保存対象となった米国出身の建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズが手掛けたデザインは、外壁が約4000平方メートル、内装は全1254パーツにも及ぶ。そのうち内装パーツの67%を再利用し、外壁は保存。現代の技術で可能な限り保存、再現する設計方針に基づいて行われた(関連記事「最新技術で名建築を復元 大丸心斎橋店本館が9月開店」

アールデコの華やかさを駆使した名建築の約6割が保存、復元され、大阪人が慣れ親しんできた姿が見事によみがえった。写真は1階化粧品売り場

 例えばヴォーリズ建築を象徴する1階の幾何学模様天井は、照明装飾の枠部など金物の大半を再利用し、経年劣化の雰囲気を残しながら再現されている。柱間隔を広げたためにできた余白には、元のデザインを継承して新たに制作した装飾を加えた。さらに天井中央の石こうにはガラス繊維を混ぜて強度をアップ。解体前にはなかったシャンデリアは、昔の写真を手掛かりに再制作し、竣工時を再現したという。「以前はなかったモダンな鏡面天井を設けたのは、鏡面にヴォーリズデザインを映し込むことで、過去と現在を融合し、未来を予感させる空間を演出したかったから」(ストアデザイン担当者)

ドーム型天井が特徴的なエレベーターホールも、エレベーターの枠や大理石の象眼、六角時計に施されていたステンドグラスはそのまま再利用。扉や階数表示板はデザインを踏襲しつつ、法律や現状に即して再現した。

大理石の象眼やドーム形の天井が特徴的な1階エレベーターホール。部材を再利用し、あえて補修した跡が分かるように復元。地震時には揺れが吸収されるよう工夫されている

保存した御堂筋側の外壁の素材は、石張り、スクラッチタイル、擬石の三層構造となっている。そこに硬さの異なる鉄骨を組み合わせるため、「地震時の揺れをいかに吸収するかが最も苦労した点」と、建築設計を手掛けた竹中工務店の担当者は振り返る。

ひび割れや欠けたタイル、擬石などは補修して、1枚1枚ピンで留めてあるという。アールデコ様式の水晶塔にもピン留めが施してあり、7階のテラスで間近に見ることができる。建築好きには見逃せないスポットが随所にあるのも新本館の魅力といえるだろう。

7階「心斎橋ひとときテラス」にはバルニバービの新業態「トゥッフェ テラス イート」と、フジオフードシステムが展開する「デリス タルト&カフェ」が出店。開放感のあるテラス席から水晶塔を間近に見られる
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