読書で知識を蓄え力にする 本を選ぶポイントは3つ
ダイバーシティ進化論(出口治明)

読書の秋。賢くなるには本を読むことが一番手軽で効率的だ。なぜ賢くなる必要があるのか。知識は力になるからだ。
例えば夫婦別姓。これに反対する人は「同姓が日本の伝統であり、別姓にしたら家族が壊れる」と言う。でもちょっと知識があれば見方は変わってくる。日本は明治以前は別姓だった。源頼朝が平(北条)政子と結婚したことは誰でも知っているが、2人は別姓だ。
海外はどうか。経済協力開発機構(OECD)の中で法律婚の条件として同姓を強制しているのは日本だけだ。夫婦どちらの姓を選んでもいいのに9割以上が男性の姓になっている現実に対し、国連は暗黙の女性差別と認識している。
こういう知識があれば夫婦別姓に対する考えは変わってくる。勉強して知識を得ることは、自分の周囲や社会を変える力になる。なにも知識がなければ「これが社会常識だ」と言われたらそれで終わってしまう。
では、どういう本を選んだらいいか。ポイントは3つある。まずは書店に行って面白そうなタイトル、すてきだと思う装丁の本を選び、本文の最初の10ページを立ち読みしよう。作者が一番力を入れて書いた部分が面白ければ、その本はきっと面白い。僕は毎週3冊くらい本を読んでいるが、最初の5ページで判断している。
2つ目は古典。何百年も市場で選ばれてきたのだからいいに決まっている。3つ目は新聞の書評だ。大学の教授や芥川賞作家などのプロが選び、推薦しているからだ。書評を読んで面白そうだと感じたのなら、きっとあなたは推薦者と感性が合っている。
百科事典や国語辞書ならスマホで代替できるかもしれない。アリストテレスはスマホで検索できるが、宗教と哲学の関係性などは本でなければ学べない。まとまった知識を得られるのが本の強みなのだ。
あなたに2人の部下がいるとしよう。1人は毎晩本を読み、1人は毎晩飲みに行く。面白い仕事が来たとき、あなたはどちらの部下を選ぶか。いろいろな知識を持っている人の方が、いい仕事に巡り合うチャンスも自然と多くなる。
本で得た知識を覚えたかったら、メモではなく人に話すことをお勧めする。自分の言葉で説明するから身につくのだ。ブログやSNSに書くとさらにいい。日記やメモではなく、人に読まれることを意識して書くことで脳が記憶する。

[日本経済新聞朝刊2019年10月7日付]
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