■オーダーで満足度を左右するのは応対してくれる人

――体形のくせを客観的に示されるとハッとしますね。

石津「道を歩いていてウインドーに体形が映ると嫌になるもんね。最近はマッチョ体形の男性が多いでしょう。既製服のサイズに合わない人が増えているんじゃない」

猿渡「特に若い人で胸囲とウエストの寸法差の大きい人がどんどん増えています。スーツに合わせるのが難しい体形ですよね」

――採寸したあとはコミュニケーションを取りながら、スーツのイメージを聞いていくのですね。

猿渡「応対するフィッターは、どんなところに着ていくのか、どういう職業か、デスクワークか、といったことをお聞きします。オーダースーツの良さは、例えばつり革につかまったとき、前身頃がそのまま引っ張られないといった具合に、体の動きが楽な点です。ライフスタイル、ワークスタイルに合わせてフィッティングし、その人に合った立体的なパターンに仕上げていきます」

――とはいえ、言葉で伝えるのは難しい場合もありますよね。

「理想のスーツのイメージって言葉にしにくいもの。美容院へ行くときのように、画像を持っていくのがいいですよ」

石津「イメージを伝えるいいアイデアが、自分のお気に入りの1着を持っていくこと。あとは美容院に行くときに、自分がこうなりたいという写真を持っていくでしょう。スーツでもそれをやるのが一番確実かな。自分がこうありたいというイメージの画像や雑誌の写真を見せて、プロであるフィッターに近いものを探ってもらう」

――フィッターの側が客とのコミュニケーションに関して気をつけている点は何ですか。

猿渡「しゃべりすぎないで、ご要望を聞く、ということです。経験豊富で洋服好きなフィッターは自分の知識を話しすぎて、それが押しつけのように感じられてしまうこともありますから」

石津「結局、オーダーで満足度を大きく左右するのは、ブランドでも店の質でもなく、応対してくれる人なんです。おすし屋さんと一緒。看板でも歴史でもなくて、いい握り手を見つけたら通い出す。だんだん自分の好みをより深く知ってもらえたらしめたもの。そのすし屋の親父さんをどう見つけるかなんですよ。食べる方だって親父とやり取りできるくらいのレベルには自分を鍛えておきたいよね」

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