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雨の東京駅(画・安住孝史氏)

雨の東京駅(画・安住孝史氏)

夜のタクシー運転手はさまざまな大人たちに出会います。鉛筆画家の安住孝史(やすずみ・たかし)さん(81)も、そんな運転手のひとりでした。バックミラー越しのちょっとした仕草(しぐさ)や言葉をめぐる体験を、独自の画法で描いた風景とともに書き起こしてもらいます。

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酷暑の夏が去り際に残した台風によって、家屋の損壊や停電など千葉県を中心に大きな被害が出ているようです。こういう台風禍はできれば避けたいものですが、僕は秋霖(しゅうりん)と呼ばれるこの季節の長雨が嫌いではありません。新海誠監督のアニメ映画「天気の子」は雨が続く物語で、興行収入も前作の「君の名は。」に続いて100億円を超えたそうですが、僕は2度見に行きました。雨の降る情景が豊かで、映像がとても綺麗(きれい)でした。主人公たちが歩く線路沿いのだらだら坂が、僕の住まいの近くの風景に似ていて、親近感も持ちました。

映画では「100%の晴れ女」が登場しますが、実は僕も晴れ男です。空模様が多少あやしくても、草履で出かけます。不思議ですが、それまで雨が降っていても、僕が外に出るタイミングでやみ、また屋内に入ると降り出すなんてことがよくあります。この夏も雨がちな日に草履でいる僕を見て、幼なじみに驚かれました。僕は晴れ男なんだと自慢しましたが。

上手な乗り方に感謝

タクシーの運転手にとって雨の日は神経がすり減ります。雨を避けるため、なるべく行き先の玄関前に着けるようお客様に指示されることが多いのですが、せまい小道の、そのまた奥の路地まで入り込むことが珍しくありません。お客様が降りた後、そのまま前方へ抜けられればよいのですが、それができないときはバックして戻るしかありません。湿気で後ろのガラスが曇っていると、運転席の窓を開けて顔を出しますが、雨はメガネも濡(ぬ)らします。電柱や塀にこすらずに広い道までたどりついたときは本当に一息つきました。

雨の夜はフロントガラスも油膜で見えにくくなります。僕は自分専用の車両をもたない「スペア-」の運転手が長かったのですが、ガラスの曇り止めスプレーが常備されていない車もありました。そのような時はタバコをほぐしてフロントガラスにこすりつけて油膜を取ります。タバコをやめてからは街路樹の葉を使ってガラスを拭くと、ぎらぎらした光の反射がおさまり、すっきり見通しがよくなりました。

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