レジ締め30分が5分に ロイヤルホストのIT活用術黒須康宏ロイヤルホールディングス社長(下)

白河 最低賃金の水準も年々上がっていますが、「ここまでなら耐えられそうだ」という予測は立てていますか。

黒須 これは労働市場の需給の結果ですので仕方がないと思っていますが、年々、賃金コストの上昇ペースが増しているのは事実ですね。したがって、その上昇分を十分にカバーできるだけの生産性向上を成し遂げることがますます重要になっています。人を減らすといった単純な方法ではなく、強みを生かしたサービスの発展や新規市場の開発という未来志向の戦略で達成していきたいと思っています。

ちょうど今、10年先のビジョンを策定しているところなのですが、これまで以上に大きな環境変化は起きると予測されますし、人手不足はより深刻化するはずです。採用もより力を入れていきたいと思っていますが、特に女性の活躍に関してはまだまだ遅れていると自覚しています。

新卒採用の6割が女性、定着に課題

白河 今は女性の割合はどれくらいですか?

黒須 グループ全体の総合職では20%程度です。新卒の割合では女性比率が上がっていまして、19年春の採用では6割が女性でした。女性店長の割合も25%ほどになってきました。

女性の働く環境を改善するため「なでしこプロジェクト」を立ち上げたという

白河 4店に1店が女性店長というのは、かなり健闘されているほうだと思いますが。

黒須 ただやはり、ライフイベントに影響されて退職していく女性が多いのは事実です。我々としてもいかに継続的に女性に働いてもらえるかは喫緊の課題と考えていて、2年前に各事業部門からさまざまな立場の女性社員に男性社員も加えて「なでしこプロジェクト」を立ち上げました。

女性が長く活躍するための制度面・待遇面の改善策を現場から発案してもらう取り組みで、「妊娠が判明した時点で短時間勤務や週休3日制を適用できるようにしてほしい」といった要望もここから生まれています。実は昨日も、同プロジェクトで「妊婦体験」という試みがありまして、妊娠8カ月時に相当するおもりを私も抱えてみたのですが、「こんなに重いのか!」と驚きました。

白河 立ち仕事ですと特につらいですよね。

黒須 はい。ユニホームも十分に整備されていないことが分かりましたし、男性社員の意識がまだまだ足りないと、自戒も含めて思いました。

白河 社長自ら体験するとは、素晴らしいですね。しかし、総合職採用に女性が6割まで増えているというのは、会社としても期待しているという意思の表れではないでしょうか。

黒須 もちろんです。特に我々の業界はもっと女性が活躍しなければならないと感じています。一方で、身体的な無理をさせてしまってはいけないので、うまくテクノロジーも導入しながらいろいろな改革を進めていきます。一つの前進としては、人事部長を女性にしました。しかも執行役員で。女性活躍の推進につながるのではと期待しています。

白河 お話を伺って、サービス業には日本全体が抱える働き方の課題が凝縮されているのだとあらためて感じました。だからこそ、イノベーションの効果が如実に表れそうですし、フードロスをはじめとしたSDGs(持続可能な開発目標)にも深く関わるテーマも抱えていますから、これから先の変化がとても楽しみです。

あとがき:コンビニの24時間営業が国の課題として取り上げられる中、なぜ24時間をやめられないのか、やめたら何が起きるのか、興味を持ってロイヤルホストへ取材に行きました。ファミレス業界も今の業態ができたのは1970年代。コンビニ黎明(れいめい)期と同じです。高度成長期、人口ボーナス期のビジネスモデルは、環境の変化に適応しないと生き残っていけない。「24時間」というファミレスの代名詞の看板を下ろし、自らのコアコンピタンスに向き合うことがロイヤルホストの答えでした。365日24時間店舗を預かる心理的なストレスはコンビニにも通じる問題提起。そして「定休日」をあえて設定することで社員はもちろん、パートの募集にも苦労しなくなるという効果がある。労働時間だけでなく「一斉に休む」ことの効果についてもヒントがありました。

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)。

(ライター 宮本恵理子)

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