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「親が非大卒」の学生に奨学金 学歴固定化に一石

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NIKKEI STYLE

夏休みも終わりに近づいています。汗をぬぐいながら大学のオープンキャンパスに行ったという高校生、そして家族も多いかもしれません。

そんな皆さんは「ファースト・ジェネレーション」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは両親が大学を卒業しておらず、自分の世代で初めて大学にいく人のことを指します。今、こうした人に注目した動きが出てきています。

東京工業大学は、両親が大学を出ていない入学生向けに、2020年度から新たな奨学金制度をつくることを決めました。毎月5万円を、最大で修士課程修了までの6年間支給します。対象枠は最大20人程度です。

あまり日本で聞いたことのない取り組みです。東工大の水本哲弥副学長に狙いを聞くと、「いろいろな環境で育った人を増やしたい」ということでした。東工大は最近、女性や地方出身者も積極的に増やそうとしています。

水本副学長は「非大卒の親を持つ子どもに入学への障壁があるならば、少しでも取り除きたい。いろいろな考えの人が混じることで、新しい発想が生まれてくる」と期待します。「ひょっとしたら該当者がいないかもしれないが、それでも社会へのメッセージになれば」と副次的なねらいも示します。

ファースト・ジェネレーションへの支援は米国では普及しています。例えばハーバード大学のホームページを見てみると、「当学の15%以上がファースト・ジェネレーションです」と開示されています。出願の手続きや、経済面の支援を教えてくれるコーディネーターも置き、助言してくれるそうです。

日本でもこうした動きが出てきた背景には、学歴の固定化があります。19年の大学進学率は53%で過去最高を更新しましたが、文部科学省の推計では40年でも57%までしか伸びません。さらに、およそ7割の人が同じ学歴の相手と結婚します。学歴社会に詳しい大阪大学の吉川徹教授は「大卒同士の夫婦は子どもを大学にいかせたいという希望が非大卒の家庭より強いため、大卒の子は大卒という学歴の再生産が起きている」と話します。

非大卒の人は大卒より生涯賃金が低くなりがちです。学歴が固定化すると、経済的な格差や政治的な分断などにもつながりかねません。もし今後ファースト・ジェネレーションへの支援が広がれば、社会に引かれた大卒・非大卒という線を和らげる一助になるかもしれません。一方、大学を出たら安泰という時代でもなくなりました。大学に入って何を得るのか、という問い直しも必要となりそうです。

吉川徹・大阪大学教授「分断回避は多様な日常生活の交流でも可能」

大卒と非大卒で学歴の分断が生じている社会にどう向き合えば良いのでしょうか。教育社会学者として長年、学歴の研究をしてきた大阪大学の吉川徹教授に聞きました。

――東工大の取り組みは、どう感じられましたか。

「正直なところ、やや戸惑っています。始めに聞いたときは良い話だと思いました。ただ、よく考えるといくつかの難しい問題が気になります」

――どう難しいのでしょうか。

「一つは運用面です。親が大卒という証明はできますが、大学を卒業していないという証明は難しいですね。家族のかたちも多様化しています。例えば大卒の父親がいて、離婚して非大卒の母親が育てているが、養育費はたっぷりもらっているという場合は該当するのでしょうか。非常にデリケートで複雑な問題で把握も困難でしょう」

――運用以外の難しさとはなんでしょう。

「住民税非課税世帯には、大規模な学費の支援制度が来年度から始まります。つまり経済的な不利については、カバーされる訳です。経済的な要素を取り除いたときに、親が非大卒だと不利益だといえる論理的な根拠はなんでしょうか。学生たちにしてみれば、親が非大卒なので助成をお願いしますという申請書を書くわけです。不利な出自だとするのは、心理的な抵抗があるかもしれません」

――非大卒の親の場合、教育への意識が乏しいという指摘があります。

「意識が乏しいとの指摘の前提には、大学進学は望ましいことだという価値観があります。しかし、非大卒家庭の中には、確信を持って親も子も非大卒の道を歩んでいる人たちが多くいます。私は、日本の大学進学率が6割程度で頭打ちになりつつあることの一因とみています。あらゆる家庭の子どもたちが大学に入った方が良いと大学側からいうのは、お節介かもしれません」

――大学進学だけが幸せな道ではないということですか。

「大卒の親が子どもに大学を出てほしいと思うのは自然なことです。ただ、大学を出ることだけがすべてはないことへの目配りも必要です。例えば地方の非大卒の家庭に子どもが2人いたとします。兄は東京の大学に出て、授業料無償化や奨学金の恩恵を受けたとします。弟は高校卒業後、親元に残って働いたとします。この場合、弟が不幸とは限らないと思います」

――非大卒のほうが生涯年収が低いというデータがあります。

「大学を卒業するには費用がかかっていますから、その費用を回収するためには大卒と高卒の間に賃金格差があるのは当然です。しかし、非大卒の人生コースを進めば、20歳前後の時期に余計な年数をかけず、金銭的なリスクも取らずに社会に出ることができます。最近では大学を出たからといって生活が保障される世の中でもなくなってきています。あらゆる人が大卒の人生コースを望む必然性はないでしょう」

――学歴の固定化は問題ないということでしょうか。

「全ての若者を大学教育に誘導することが日本にとって良いことなのかということに疑問を持っています。持続可能な社会の在り方を考えるとき、非大卒の世帯が安定して世代を重ねていくことは、一つのカギになります。高卒で地域を守るような仕事をしている人への支援がもっとあっていいのではないでしょうか」

――学歴が固定化すると、政策面や政治面での分断につながりませんか。

「確かに分断を避けるためには、多様なライフコース(人生経歴)が入り交じるようにするという方法があります。ただ、人々のライフ(日常生活)を入り交じった状態にするという方法でもできるでしょう。仮に親も東大出の官僚、自分も東大出の官僚であっても、自分とは全く違うライフコースの人の生活を尊重して日常的に交流する。こうしたやり方でも分断を回避できるのではないでしょうか。学歴について研究してきた私の実感です」

(福山絵里子)

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