首都圏などから地方の公立高校に入学する「地方留学」にブームの兆しがみえる。高校の生徒募集イベントを訪れる中学生や保護者が急増、高校側は地域ぐるみで受け入れ態勢の充実を急ぐ。地方で人口減少が進む一方、東京生まれの子どもは増え続ける。都市から地方へ向かう若者の流れを太くする取り組みに関心が集まっている。
地方公立高校の県外募集を後押しする地域・教育魅力化プラットフォーム(松江市)は6月、東京、大阪、名古屋、福岡で地方留学のイベント「地域みらい留学フェスタ」を開いた。来場者は中学生や保護者ら2093人。2018年の1173人から大幅に増え、出展した高校も34校から55校になった。
東京会場には1122人が参加。神奈川県の女性は「上の子は横浜の高校で1学年500人。少人数で大事にしてくれる地方の高校もよいと思った」と中学2年の娘を連れてきた。中学3年の息子と来た東京都内の女性は「都内の高校は似た育ちの子が多くなる。いろいろな人が見守ってくれる環境で価値観を広げられれば」と話す。
埼玉県の中学3年の女子生徒は「地域とふれ合う機会の多い高校に行きたい」と自ら希望して参加した。母親は「親としては大学受験が心配だったけど、希望校は学力のサポートもしてもらえる感触があった」と少し安心した様子だ。
県外生徒の募集は島根県の隠岐島前高校が、町おこしの一環で始めたことで知られる。これを島根県が県下の公立高校に広げ、昨年から全国規模に拡大した。隠岐島前高校のほか、沖縄県の久米島高校や広島県の大崎海星高校、北海道の奥尻高校など離島の高校の人気が高いが、今年は「本土の山系」の高校も力を入れ始めた。
四国山地にある愛媛県の上浮穴高校は森林環境科で年10人の県外生徒を見込む。地元の久万高原町はドイツ研修費用の大半を補助し、生徒は5万円の自己負担で済むなど町ぐるみで支援する。20年春には新しい寮も完成。県外生徒の募集でも自治体間の競争が始まった形だ。
先行する隠岐島前高校は交換留学の幅を広げる。2年生では1学期はシンガポール、2学期はブータン、3学期は首都圏の高校にそれぞれ交換留学し、3年生で地域に戻って地域の未来を考えるプログラムを検討しているという。