「餃子を待つ満島ひかり」に共感 一番搾りCM好感度
2019年6月度 CM好感度月間ランキング
CM総合研究所が発表する6月度の銘柄別CM好感度ランキングで、キリンビールの「キリン一番搾り生ビール」(以下、一番搾り)が7位にランクインした。堤真一、満島ひかり、鈴木亮平、石田ゆり子がそれぞれ出演する新CMに加え、新たに濱田岳と足立梨花が1人ずつ登場するCMを放送。約1年ぶりにトップ10入りした。
キリンビールは今年で発売30年目を迎える「一番搾り」をフルリニューアル。2017年に次ぐ今回のリニューアルでは、麦本来のうま味が感じられる、調和のとれた雑味のない味わいをさらに進化させたという。
そのキャンペーンにあわせて、6月度は一番搾りのCMが12作品流れた。そのうち6作品で、各人がビールの楽しみを歌うCMソングをBGMに商品を味わう姿を描いた。キリンビールマーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当の濱崎智行氏は、6人のタレントを選んだ理由を「幅広い世代の方に一番搾りのおいしさを伝えるために、各世代を代表するタレントの方々を起用させていただきました」と言う。
作品別に好感度を見ると、トップは「満島ひかり 餃子とビール編」。続いて「濱田岳 うなぎ編」「堤真一 バーベキュー編」「鈴木亮平 直帰編」「石田ゆり子 お土産編」「足立梨花 ホルモン編」という順番。
最も好感度が高かった「餃子とビール編」は、餃子の店にいる満島ひかりが、先に来たビールを目の前に、「餃子とビールは一緒じゃなきゃダメ」と餃子が来るのを待って耐えているが、我慢しきれずに「餃子よ、ごめんよ、やっぱりフライング」とビールを飲んで、おいしそうに笑みを浮かべる。
CM総合研究所の関根心太郎代表は、この作品が一番人気の理由をこう分析。「餃子とビールの組み合わせが消費者の心をとらえる鉄板なのに加えて、満島さんのビールを飲むのを待ちきれない気持ちが、広く共感を呼んだようです。ビールを飲むときの幸せ感を『やっぱりフライング』という一言で表現したのもうまいと思いました」
銘柄別でのCMの主な支持層は30代以上。調査に答えたモニターの感想は「おいしそう」「飲みたくなった」という声が圧倒的。CM好感要因は「商品にひかれた」が好評価を得た。一番搾りのCMがトップ10入りするのは、18年5月度の8位以来、約1年ぶりだ。
キリンビールによると、売れ行きも好調。「フルリニューアル後の缶の売り上げが、過去3回のフルリニューアル時を上回る歴代売上ナンバーワンを記録(フルリニューアル後50日間の販売実績)。購入者数伸長率も前年比(5月を比較)で2割超を達成しました。デジタル施策を強化したこともあり、20代の購入者数が約4割伸び、販売全体の底上げにつながっています」(濱崎氏)と言う。
ビールのおいしい瞬間にフォーカス
CM総研の関根氏は、売れ行きを促すCM表現の巧みさを指摘。「ビールの味わいをコクやキレと表現しがちですが、一番搾りのCMは『うなぎにもやっぱりビール』『餃子とビールは一緒じゃなきゃだめ』『ビールと直帰する』のようにビールがおいしく感じられるシチュエーションを前面に打ち出しているのが最大の特徴です。商品の名前や特徴を連呼するよりも、ビールのおいしい瞬間だけにフォーカスして、最後にすっと一番搾りの商品名が入るという表現が、見る人の共感を極限まで高める手法として効いています」
クリエーティブ・ディレクターは、auやアタックZEROなどのヒットCMを生み出している篠原誠氏。消費者の目線を大事にする表現が、篠原氏の手がけるCMの共通点だが、一番搾りのCMではビールの「おいしさ」にこだわり、多くの人々の心を捉えたようだ。
(日経エンタテインメント! 小川仁志)
■当月オンエアCM:全2535銘柄
■東京キー5局でオンエアされたすべてのCMを対象に、関東在住の男女モニター3000人に、好きなCM・印象に残ったCMをヒントなしに自己記述してもらい、その得票数を足し上げたもの
■同商品の複数作品にオンエア・好感反応がある場合、代表作品は最もCM好感度の高い作品
■企業・銘柄名・作品名はCM総合研究所の登録名称であり、正式名称と異なる場合がある
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。