終身雇用の時代なら、場合によって違う職種に異動することも当然でした。会社としてはビジネスの都合にあわせて人員配置ができたほうが望ましいからです。一方で働く側は社外でのキャリアアップは考えていなかったし、また考えられるような労働市場もありませんでした。

だから「年功報酬」の仕組みに従い、多くの人が不満を押し殺しながら会社の指示にしたっていました。

けれども、前々回「もはやベアは過去のもの 給料=あなたの価値の時代に」で示したように、終身雇用は消えていこうとしています。

そして不満を押し殺しながら働かなくてもよい立場の人たちから転職するようになってきました。

会社が求めるものと自分が求めるものとのギャップを理解しよう

もしあなたが会社から求められるものに対して合意し、そのための仕組みに自分が合っていると思うのなら、今の会社や業界で活躍し続けることが望ましいでしょう。

けれどもあなたが今の状況に不満を持ち、なおかつ、会社が求めてくるものに対して納得できないようなら、それはミスマッチが生じているのかもしれません。

今回も示した給与の仕組みのマトリクスは、そんなミスマッチを理解するためのツールとしても使うことができます。

たとえばあなたが今の会社に不満を持っているとするなら、まず給与の仕組みを見てみてください。

そしてその上で、あなたが求めるものが「キャリアアップ」なのか「終身雇用」なのかを考えてみてください。さらにあなたが生み出したい価値が「品質や正確さ」なのか「売り上げやシェアの拡大」なのかも。

そうして導き出された結論について、縦軸あるいは横軸の一方だけがズレているのなら、その場で頑張り続けたほうがよいかもしれません。

けれどももし両軸ともズレているのなら、異なる選択をしたほうがよいかもしれません。

あるいは、職種別などの人事の仕組みの変革を経営層や人事部門に求めていくことも一つの手段です。

平康慶浩
 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。高度人材養成機構理事リーダーシップ開発センター長。

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