――ラグビーをやってよかったと。

「そうですね。あそこまでエネルギーを使い切る、燃焼しきる経験ができた。ラグビーをやって本当によかったなあと思いますね。人生でなかなかない気がする。僕の知っているところでは撮影現場くらいかな」

「しばらく試合も全然見なかったんです。今の世界に入って、だいぶ歩けるようになってから、自分のルーツみたいなものをふと振り返ったときに、ラグビー楽しかったなあ、というのがあって。35、6歳くらいかな。まず母校の青山学院大ラグビー部を応援しようと秩父宮ラグビー場に行くようになりました。ひとりでふらっと来たこともあります」

初めて楕円球にふれたときは「すごい不思議。何でこんなややこしいものを使うんだろうと思いました」(2019年7月、東京都港区の秩父宮ラグビー場)

――ラグビーの経験が芸能活動に生きることはありますか。

「作品をつくるときの撮影現場は、やはりチームなんですよね。大勢がかかわって、ひとつの作品、面白いものをつくろうと。それは完全にラグビーと同じ感じですよね。自分が主役をやるときでも、スター選手のような意識がないというか、全員でやるんだ、というのはすごくありますよね。ドラマ『不惑のスクラム』のときも、毎回1人ずつを主役にして、縦線のように僕がいるというのがいい、それがラグビーっぽいんじゃないかと提案しました」

――数え年で40歳以上の草ラグビー部が登場しました。撮影に協力した実際の選手たちを見てどうでしたか。

「驚きましたね。60代、70代、80代までいて、平気でガンガン走って、当たってくる。手加減されると臨場感がなくなるからと言うと『え、いいの』と。『いいよ、いいよ、こっちだって鍛えてるんだから』と答えたら、喜んでおじいさんたちがぶつかってくるんです。すごかったですよ」

――ドラマには前回W杯で日本代表が強豪・南アフリカに勝利したシーンも出てきました。実際はどこで観戦していましたか。

「家でひとり、友達と連絡を取りながらテレビを見てましたけど、信じられない瞬間でした。(同点引き分けではなく逆転勝利の可能性にかけて)スクラムを選んだ一瞬、鳥肌が立って、涙が出てきて、本当に力が抜けたような感じになって。勝利の瞬間ではなく、あのスクラムを選んだ瞬間が日本ラグビーの大きな転機でしたよね」

――W杯にのぞむ日本代表にはどんな期待を。

「やっぱり優勝をめざしていきましょうよ、と。1次リーグは2位でいいから、決勝トーナメントにあがってほしい。(強豪国に比べて見劣りする)体格をカバーするような、ジャパン(日本代表)らしいオリジナルなラグビーを期待しています。相手の裏をかき、先へ先へ攻撃をしかけ、出し抜き、翻弄していくのを見てみたいなあ。そんな簡単にはいかないんだと思いますが」

――特に応援している代表選手は。

「松島幸太朗選手(フルバック、ウイング)。彼は体が小さくて、相手にはじかれちゃうときもあるんですが、それでも突破しようとタテに行くじゃないですか。あの気概がすごくいいですよね。はじかれても、なんてことないという感じで、へこまない。それでこそラグビー選手、という感じがしますよね。インタビューしたこともありますが、とてもストイックな印象でした」

――女性を含めラグビーのここを見てほしいという点はありますか。

「なかなか最近の世間にはいない、男くさくて頼れる猛者たちがたくさんいて、ワーッと力をぶつけあう面白さ、力強さをぜひ感じてほしい」

「僕はこういう世界にいるので、少し選手のタレント性をあげたいなという思いもあります。ファンサービスというか、選手たちを演出していくことで、ラグビーをもっとオープンな感じにしていけるのではないかと。怒られるかもしれないけど、すごく歯がゆいなと思っています」

――子ども時代にラグビーを体験することをどう思いますか。

「情操教育にはとってもいいと思うんですよね。自分自身がそうだったので。厳しいスポーツだからこそ仲間を必要としたり、仲間のために頑張ったり。自分ひとりで生きているわけではないことを学ぶには、とてもいいんじゃないかな」

「僕はラグビーを途中でやめちゃってるから、なんとなく当時の仲間に負い目を感じているんですけど、彼らには言われるんです。『それ一番気にしているのはおまえだ。周りはそんなに気にしてないぞ』って」

高橋克典
1964年12月横浜市生まれ。青山学院に初等部から在席し、同大経営学部中退。1993年の歌手デビュー後、俳優としても活躍。『サラリーマン金太郎』『特命係長 只野仁』『課長 島耕作』など人気テレビドラマシリーズや映画への主演多数。2018年のNHK『不惑のスクラム』では、ラグビーとの再会によって人生に光を見いだす中年の主人公を好演した。19年8月刊行の『ラグビー日本代表の挑戦を見届けろ!』(週刊女性臨時増刊)に対談で協力。同10月には朗読劇『ラヴ・レターズ』への出演も予定している。

(聞き手 天野豊文 撮影 五十嵐鉱太郎)

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