グルメクラブ powered by 大人のレストランガイド

食の達人コラム

生ハム・バカラオ… 塩の道が伝えた世界の塩蔵食品 魅惑のソルトワールド(31)

2019/8/2

生ハムも塩蔵食品のひとつ

前回のコラム「数の子・塩辛… 日本の塩蔵食品、保存と発酵の技満載」で、食材を塩で漬けることで保存がきくようになるメカニズムと、日本で古くから伝わってきた塩蔵食品や塩の道について紹介した。今回は世界各国に視野を広げて、塩蔵食品とその歴史について書こうと思う。

私たちの身近にある海外産の塩蔵食品と言えば、生ハムやサラミが最もわかりやすいだろうか。生ハムの作り方は意外とシンプルだ。生ハムの最高峰とも言われるスペインの「ハモン・イベリコ」の作り方を調べてみた。まず、骨付きの豚肉の塊をマッサージしてしっかりと血抜きをし、その後に塩を丹念に全体に刷り込み、塩で豚肉が見えないくらいの状態にする。その状態で1週間以上寝かせて、塩を洗い流してから、乾燥室に運んでつるす。

表面にオリーブオイルなどの油分を塗り、湿度や温度がコントロールされた乾燥室の中でつるしながら約6カ月以上熟成させていく。大体2~4年、長いものだと5年の熟成期間を経て出荷される。この熟成期間に、豚肉自身が持つ酵素の働きでたんぱく質が分解されてアミノ酸(うま味の素)が増加するとともに、イノシン酸が生成されてうま味の相乗効果が表れる。さらに、水分が飛ぶので凝縮感が出て、より強くうま味を感じるようになる。また、筋繊維をまとめていたコラーゲンもほどけて食感も軟らかく変化するのである。

この、長い熟成期間に腐敗に向かわずにきちんと熟成させるために、塩は非常に重要な役割を果たしているのだ。塩を減らして仕込んだ場合、豚肉の中の水分が抜けきらず、腐敗菌が活動して、間違いなく腐敗してしまうからである。

なお、生ハムは欧州では紀元前から保存食として生産されてきた。それぞれの国や地域で微妙に作り方に違いはあれど、基本的な工程は同じだ。イタリアでは、「プロシュート」、スペインでは「ハモン・セラーノ」と呼ばれ、日常的に親しまれている。

日本では長らく、加熱したロースハムやボンレスハムのみ製造が認められていたが、1982年に生ハム製造の規格が制定され、それ以降は国内でも生ハムの生産ができるようになった。製造には高い湿度や温度はご法度のため、秋田県などの寒冷地での生産が盛んだ。

グルメクラブ 新着記事

ALL CHANNEL