サッカーのJリーグはお金がないから外国の強い選手、人気選手を呼べない。だからクラブチーム同士の試合で海外勢に勝てない。勝てないから人気が広がらず、スポンサーを見つけるのに苦労し、収入も増えない。悪循環です。企業も同じ。強くないと、業績がよくないとだめ。そのためにダイバーシティーを進めるんです、と。わかりやすいでしょ。
「正しいことを正しく」が大事
これまで会社の経営をしてきて、あるいは自分の人生で、一番大事にしている言葉は「正しいことを正しく」です。自分がやっていることが正しいという信念がなければ、抵抗勢力と戦って改革を進めることはできません。では、何を正しいと判断するのか。それは、僕のプラグマティスト(現実主義者)としての生き方が影響していると思います。
自分が正しいと思ったら、それをやり続ける。しかし、世の中には正しいと思っても、どうしてもできないこともあります。法律もその一つです。この法律は間違っていると思っても、違反はできない。そういうときは、法には従いながら、「これはろくでもない法律だ」とはっきり言います。たとえば、僕は残業手当は間違った制度だと思っています。法律だから残業代はきちんと払いますが、制度そのものに関しては、ずっと「おかしい」と言い続けています。
僕は団塊の世代の生まれなので、正しいことは正しい、変なことは変なことと本音で言ってきました。そうしないと相手に通じないんですよ、団塊の世代というのは。タレントの北野武さんは僕と同年代ですが、あの率直な物言いを見ていると、やはり世代の特徴が出ているんじゃないかなと思いますね。
最近、忖度(そんたく)がはやっているようですが、僕は何でも本音で言うから、忖度なんてまずしません。いや、たまにあるかもしれない。でもそのときは、忖度しているとはっきり言いますよ。
1947年京都府生まれ。京都大学大学院修了後、伊藤忠商事入社。93年にジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)日本法人に転じて社長などを歴任した。2009年にカルビーの会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。停滞感のあった同社を成長企業に変え、経営手腕が注目されるようになった。11年には東証1部上場を果たし、同社を名実ともに同族経営会社から脱皮させた。18年に新興企業のRIZAPグループに転じ、1年間構造改革を進めたのも話題に。
(ライター 猪瀬聖)