ナショジオ

ニュース

サルに3000年の「石器時代」発見 使う石にも変化

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/7/13

■560年前に節目、300年前に今のように

4回にわたる発掘を終え、炭素年代測定で分析した結果、約3000年前の地層まで掘り下げたことがわかった。しかも面白いことに、さまざまな地層で見つかる石に変化が見られることに気付いた。3000年前から560年前ごろまでは比較的小さな石ばかりで、どれも強い衝撃が加えられていた。今と異なり、何度も的を外していたようだ。その頃、ヒゲオマキザルは小さな食べ物ばかり食べていたと研究チームは考えている。

それ以降は、より大きな石を使うようになっていった。以前よりも硬い食べ物を求めるようになったのだろうか。そして300年ほど前に、今のようなカシューナッツの硬い殻を割るのにちょうどいい大きさの石に落ち着いた。

なぜ、この地域に住むヒゲオマキザルの食べ物は変化したのだろうか。プロフィット氏とファロティコ氏は、はっきりしたことは言えないとしている。好みが異なる別の群れがすんでいたのか。または、この辺りに生える植物が変わったということも考えられる。

ウィリアムス・ハタラ氏も、古代のオマキザルが何を食べていたかはまだわからないと指摘する。昔の石には、カシューナッツの残留物が付着していないが、その頃はカシューナッツを食べていなかったのか、あるいは単に残留物が時とともに分解して消失したのかもしれない。また、ヒゲオマキザルが石を打ち付けるという行動自体は昔からほとんど変わっておらず、発掘現場が示した変化をあまり深く考えすぎてはならないとも付け加えた。なお、ウィリアムス・ハタラ氏は今回の研究には関わっていない。

「石を打つ対象物が変化したとしても、道具の機能や動物の行動も変化したということかと問われれば、答えはノーでしょう」

■独自の進化を遂げた?

プロフィット氏とファロティコ氏は、今後もこの研究を続ける予定だ。例えば、人間以外の動物が使う道具までもが幅広く見分けられるようになれば、さまざまな場所で発見された石器の使用者をより特定しやすくなるだろうし、霊長類が道具を使うようになった進化的土台を理解できるかもしれない。

オマキザルにしても、全ての集団が道具を使うわけではない。なぜ、セラ・ダ・カピバラのヒゲオマキザルだけ例外なのだろうか。ほかに、パナマでもオマキザルが道具を使用しているという報告がある。

「オマキザルの祖先は3800万年前に人類の祖先と枝分かれしましたが、これらの集団にはどんな特別な進化の歴史、生態系、社会システムがあって、道具を使えるようになったのでしょうか」と、ドイツにあるマックス・プランク進化人類学研究所の博士研究員ブレンダン・バレット氏は問う。「恐らく、彼らは独自の進化を遂げたのでしょう」

発掘現場があるセラ・ダ・カピバラ国立公園では、今もオマキザルが石を使ってカシューナッツの殻を割っている(PHOTOGRAPH BY TIAGO FALÓTICO)

霊長類の道具の使い方は実にさまざまで、オマキザルが人類の祖先と同じように進歩するかどうかは不明であると、研究者らは強調する。例えば、カシューナッツを割る衝撃で石が割れてしまうことがある。しかし、野生のオマキザルがその割れた石をナイフのように使っている姿は観察されたことがない。この点は、人類の進化において重要なステップだった。

プロフィット氏は言う。「個体が石を道具として使う期間を『石器時代』と定義するなら、オマキザルにも独自の石器時代があると言えるでしょう。その点に問題はありません。けれども、その石器時代がもっと複雑な何かに発展するかどうかということに関しては、まったくわかりません」

(文 Michael Greshko、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年6月26日付]

ナショジオ 新着記事

ALL CHANNEL