石で貝割るラッコは右利き 考古学的手法で判明

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/5/17
ナショナルジオグラフィック日本版

ラッコは貝を石に叩きつけて食べる。ラッコは道具を使用する数少ない動物の一種だ。ラッコが使った石の摩耗具合や、捨てられた貝殻の割れ具合を分析した結果、米カリフォルニア州沿岸に生息するカリフォルニアラッコの多くが右利きであることがわかった。

石や貝殻の割れ具合を調べるというのは、実は考古学的手法だ。確かに、考古学者は先史時代のゴミを見るだけで多くのことを言い当てられる。太古の昔、腹を空かせた人々が砕いた貝殻の山から、私たちヒトがどこで、どのように、どれくらいの間、暮らしていたのかを読み解く。

カリフォルニアラッコが右利きとわかったのは、捨てられた貝殻の同じ側に割れが集中していたからだ。かつては類人猿とヒトだけが「利き手」を持つと考えられてきたが、カンガルー、シロナガスクジラ、そして今回のラッコでの調査によって、「利き手」を持つとされる動物の範囲は広がるばかりだ。

動物研究における考古学的手法の有用性が証明できれば、ほかの研究でも使えるようになることが期待されている。

「ラッコがどれくらいの期間にわたって道具を使ってきたのか、そしてどれくらい道具使用が広がっているのかについて調べられるようになります」と、研究を率いた米国モントレーベイ水族館のジェシカ・フジイ氏は話す。

太平洋岸北西部からアラスカにかけて生息するアラスカラッコよりも、このカリフォルニアラッコという亜種の方が道具を使用することが多いことがわかっている。今回の手法を使えば、なぜそうした地域差が見られるのか、という問いに対する答えも見つかるかもしれない。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2019年4月3日付記事を再構成]

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