スープラ開発者「スポーツカーは成長産業」という理由

小沢 新型スープラにデータロガーを取り付けて実際のサーキット走行データをゲームに吸い上げ、ゲーム上で練習できるみたいな部分がそれですね。

多田 そう。しかもそれは自動運転時代のセンサーがあればこそで、技術進化があったから、簡単にいろいろな新しいトライができるようになったんです。

小沢 すべては密接にリンクしていると。自動運転の時代だからこそ生まれた新しいスポーツカーエンターテインメントだというわけですね。

多田 その通り。自動運転でクルマはつまらなくなるって思っている人もいるでしょうが、テクノロジーを使えば反対に面白くもできる。すでにオンラインゲーム上ではFIA(国際自動車連盟)公認の「GR Supra GT Cup」が、世界規模で行われていますしね。

小沢 それが、スポーツカーは成長産業であると言い切る証拠だと。

多田 そうです。

デザイナーはアウトバーン(独・オーストリア・スイスを通る高速道路)や独・ニュルブルクリンクの近くに常駐し、実際にレーシングカーに乗りながらデザインを完成させたという

いったいなぜBMWと協業したのか?

小沢 再び「そもそも論」ですが、そもそもなぜBMWとスポーツカー作りで協業したんですかね。やはり技術力ですか。

多田 次はそこですか(笑)。協業は、なにかとネガティブに捉えられることが多いんですが、それってクルマ業界だけなんですよね。例えばiPhoneですけど、どこで作られてるか知ってますよね。

小沢 台湾の鴻海精密工業ですよね。工場は中国にあるみたいですが。

多田 それどころか主要パーツは日本、中国、台湾と様々なところから供給されていますが、そんなことで文句を言う人なんてどこにもいないんですよ。

小沢 iPhoneはデザインとかパッケージとか、使い勝手で評価されてますからね。

多田 だからクルマだってデザインとかアプリケーションとか、どうやって遊ぶかが一番大事なのであって、世界中から一番いいパーツを集めて、それを組み合わせて、いい作り手に組み上げてもらって、いかに価値を高めるか。それが当たり前なんです。

小沢 分かります。でもまあクルマは素材や産地へのこだわりが強いんですよね。昔からやけに(笑)。

多田 そうなんです。クルマに関してはどこか全部自分のところだけで作るべき、みたいなノスタルジックな幻想がある。でも今どき手持ちの技術だけで商品を作って勝負していたら会社は傾きますから(笑)。

小沢 ごもっとも。実際、今や独メルセデスが日産自動車にエンジンを供給し、マツダがFCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)にスポーツカーを供給する時代ですからね。

多田 実際、スープラを作るにはBMWと協業するのが最も良い道だったと思うんです。具体的にはスープラといえばストレート6、つまり直列6気筒エンジンが肝じゃないですか。あれをもう一度作るとなると、時間はかかるし工場も作らないといけないしで、もう大変。

小沢 一からトヨタが直6エンジンを作り直すのは難しすぎますか。

多田 全然難しいことはないと思うんですが、では仲間はどれだけいるんだということなんです。昔だったら直6をスープラに使って、さらにソアラやマークIIにもというふうに仲間はいくらでもいましたが今はそれはない。

小沢 つまり協業は必然だったと。

多田 そうだと思います。

ただ・てつや(左) GAZOO Racing Company GR開発統括部チーフエンジニア・スープラ開発責任者。1987年トヨタ自動車入社。ABS(アンチロックブレーキシステム)やスポーツABSなどの新システム開発を担当。「ラウム」「パッソ」「bB」「ラクティス」「WISH」「アイシス」などのチーフエンジニアを歴任後、新型スポーツモデルの企画統括に携わる。開発責任者として「86」をスバルと共同開発し、現在はスープラを担当
小沢コージ
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、「ベストカー」「時計Begin」「MonoMax」「夕刊フジ」「週刊プレイボーイ」、不定期で「carview!」「VividCar」などに寄稿。著書に「クルマ界のすごい12人」(新潮新書)「車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本」(宝島社)など。愛車はロールス・ロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。

(編集協力 北川雅恵)

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