ANAハワイ便の機内食 エコノミーを1種類にした理由
連載 ヒコーキに恋して ANAホノルル便機内食 前編
全日本空輸(ANA)は5月24日から成田―ホノルル路線に欧州エアバスの超大型機「A380」を導入する。同社はそれに伴い機内サービスも一新。機内食も新たなメニューを用意した。いったいどんな料理が出てくるのか。飛行機が大好きなフリーアナウンサー、貞平麻衣子さんが新しい機内食メニュー、さらにそこに秘められた狙いについて担当者に直撃した。前編はワイキキの人気店とコラボしたエコノミーの機内食を取り上げる。
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「飛行機に乗るときの楽しみは機内食」という方、多いのではないでしょうか。
間もなく運航が始まるANAのA380。TVCMや広告などで目にした方も多いかもしれません。エアバス社が製造した「超」がつく大型旅客機で、日本の航空会社としては初めてANAが定期就航させるんです。世界最大級の大きさで総2階建て、座席数は520席もあります。以前、日本とフランス・パリ間を結んでいたA380に乗ったことがありますが、あまりに広すぎて飛行機で空を飛んでいる気がしないくらいでした。
そんなA380に特別塗装されたのは、ハワイ語で「ホヌ」と呼ばれる幸せの象徴「海ガメ」の愛らしいイラストです。愛称は「FLYING HONU(フライングホヌ)」、「空飛ぶ海ガメ」って意味なんですって。こんなに大胆な塗装をするなんて、ANAさんのホノルル便への意気込みが伝わってきますね。
そんなA380エコノミークラスで大注目なのが「ANA COUCHii(カウチ)」です。初めて実物を見せていただいたときは思わず「最高!」と叫びました(笑)。座席についているレッグレストを持ち上げると、なんとベッドのように使うことができるんです。小さなお子さん連れのファミリーや、長時間フライトはちょっと辛いという年配の方にもうれしい座席ですよね。このANA COUCHiiなら、まだ小さいおいっ子や自分の親も一緒に旅行に行けるなあと夢が広がりました。
ワイキキで使える特典も
そんな新しい機体とならんで注目したいのが機内食です。エコノミークラスの日本発便では、オーストラリア発祥で、ハワイ・ワイキキにある人気店「bills(ビルズ)」とのコラボレーションメニューが提供されるんです。ハワイを訪れたら絶対に行きたいと思っている人も多いのでは?
「billsさんとは何回もやりとりをして機内食を実現しました。コラボにあたっては、billsのレストランターであるビル・グレンジャーさんにもケータリング工場にきていただいたんです」と教えてくれたのは、機内食をはじめとする機内サービスを担当しているANAのCEマネジメント室商品企画部マネジャー、佐々木正典さん。「bills側が考案したオリジナルメニューを、ANAの機内食を担当するシェフが再現。その時点でもう一度、グレンジャーさんに試食をしていただき、正式にゴーサインが出た、という形です」
billsとのコラボレーションで用意された機内食は2種類。まず5月24日から8月31日までの期間に出されるのが、billsの定番メニューをアレンジした「ポークシュニッツェル」。パセリとケッパーの合わせバターとローストレモンを添えています。続く9月1日から11月30日まで提供されるのが、人気メニュー「イエローフィッシュカレー」をベースに使用した「グリルドチキン」。こちらは日本風のカレースパイスと東南アジアの味付けを組み合わせたそうです。さらにワイキキに到着したあと、トレーにのったミニカードをbills Waikikiに持っていけば、ウエルカムドリンクが1人1杯プレゼントしてもらえるという特典が付いています。
見た目もかわいらしくてインスタ映え間違いなしの機内食。ただ佐々木さんによると「実は2年くらい前まではマットもなかったんです。ANAと書いてあるものが箸袋くらいしかありませんでした(笑)」
言われてみればたしかにその通り。私もANAに乗って機内食の写真を撮るときは必ず箸袋を入れていました(笑)。
「今は貞平さんのように写真を撮るのがあたりまえ。飛行機の中は非日常的な空間だと思いますので、見た目も楽しんでいただきたいと考えたんです。だからトレーのマットにロゴを入れて、デザインにこだわったんです」
ハワイ到着後を考えた変更
今回の日本発ホノルル行きの機内食は、billsのメニュー1種類です。あの「ビーフ オア フィッシュ?」がなくなるのです。その理由は?
「日本を出発してハワイへ向かうときのフライト時間は約6時間。乗客の皆様にはできるだけ自由な時間を楽しんでいただきたいので、常にサービスをコンパクトにすることを心がけています。現状は『和食と洋食、どちらがいいですか』とお選びいただいているのですが、迷う方も当然いらっしゃるので、食事に2時間から2時間半かかります。今回、1種類に絞ったことで、提供する時間が約1時間短縮できると考えています」
A380は世界最大の旅客機。今回運航するホノルル線の総座席数は520席で、従来の機体の2倍に増えるとのこと。エコノミークラスだけで383席あるそうですので、サービスの効率化は重要なテーマというわけでしょう。サービス時間の短縮は、サービスを提供する側だけでなく、乗客にとってもメリットがあります。
「ハワイ線は日本を夜遅くに出発して、現地の朝早くに到着します。せっかくハワイへ来たのだから、到着したその日から思う存分遊びたいという方も多いと思うんです。機内食を食べ終わるのが遅くなると、その分、睡眠時間が短くなります。寝不足の状態で飛行機から降りたら、旅行の貴重な1日を無駄にしてしまうかもしれません。だからできるだけ早く機内食を出すようにと工夫しているのです」
ちなみに、お肉がどうしても食べられない人に向けては、事前予約で「特別機内食」メニューからも選べるとのこと。もちろん、アレルギーや宗教上の理由で食材の配慮が必要な方にも対応可能だそうです。心配な方は予約時や出発前に確認してみてくださいね。
ホノルル線初のファーストクラスも導入
今回のA380導入にあたって、ANAとしては初めてホノルル線にファーストクラスを導入しました。座席数は全部で8席。それに合わせてファーストクラスの機内食も一新しています。
実は今回の取材で、ファーストクラスの食事を体験しているのです。ファーストクラスはどんな料理が出てくるのか。そこに秘められた苦労とは。後編「ANAハワイ便 新設ファーストクラスの機内食を体験」で紹介します。
1981年3月16日生まれ、O型。元地方局アナウンサー。現在はホリプロに所属し、NHK-FM「クラシックカフェ」などを担当。趣味は、飛行機と愛犬とビールと旅。一人旅でアマゾン川のピラニアを釣ったり、愛犬を連れてパリに行ったりするなど、大の旅好きでもある。
(写真 吉村永)
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