スープラ開発者「スポーツカーは成長産業」という理由

17年ぶりに復活した「GRスープラ」(税込み490万円~)
17年ぶりに復活した「GRスープラ」(税込み490万円~)

17年ぶりに復活したトヨタ自動車のピュアスポーツカー、新型「GRスープラ」。独BMWと初めて協業したことが話題になった。もちろんそこも気になるが、この「スポーツカー不毛時代」になぜ? と思う人も多いはず。だが、チーフエンジニア多田哲哉氏はとっておきの逆説を導き出す。小沢コージ氏が話を聴いた。

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小沢 そもそも何のために、誰のために今回スポーツカーを作ったのでしょう。それもスープラなんて本格的なクルマをBMWと一緒に。

多田 いい質問ですね。最近みなさんに同じことを聞かれます。でも僕らはけっこう逆だと思ってやっているんですよ。確かにカーシェアリングの時代になったら、クルマは今の3割ぐらいで十分といわれています。それどころかすでにクルマの所有はステイタスにもならないだろうし、単なる移動用のクルマなら買って持っている必要もない。駐車場も要らなくなりますし。

小沢 そういうイメージだと思います。

多田 でもそういう時代になってもクルマを買ってくれる人がいるとしたら、それってよっぽど趣味性が高いとか、愛情を注げるプロダクトだってことじゃないですか。その最たるものがスポーツカーだと思うんです。

小沢 最も要らないものですけどね。

多田 最も要らないものだけど、最も買いたいものでもある。今の自動車業界の中では数少ない成長産業の1つだと思っています。

小沢 成長産業! マジですか?

多田 そう思いません?

小沢 うーん、僕はいつも言ってますが、現在スポーツカービジネスで成功しているのは独ポルシェと伊フェラーリだけ。そのポルシェですら最近ではSUV(多目的スポーツ車)が販売の7割を占めていて、基本すっごく厳しいビジネスじゃないですか、スポーツカーって。

多田 ははは(笑)。確かに全体で言うとね。だけど、それは今だから厳しいんですよ。今後モビリティー社会にパラダイムシフトが起こると、逆にスポーツカーが生き残れる道が生まれる。スポーツカーに限らずとも、極めて趣味性が高く自分でお金を払ってでも所有したくなるクルマが絶対に求められる。そういう物作りに対するノウハウは、今からこういうことをやっていかないと絶対に蓄積できない。

トヨタ「GRスープラ」のチーフエンジニア多田哲哉氏

ハイテクが生みだす新スポーツカーエンターテインメント

小沢 そんな先のことを考えていたんですか。いわば、クオーツ時計に席巻された後に生まれた機械式時計みたいなものですよね。

多田 その通り。時計も一旦アナログの機械式が売れなくなって、その後スイスメーカーが復活するわけじゃないですか。だけど今またアップルウォッチが売れるような時代にもなってきている。

小沢 機械式も売れていますけどね。

多田 ああいう老舗メーカーも、自分のブランドを生かしつつ、ハイテクを取り入れたハイブリッド時計みたいなものを生み出しているわけですよ。だから僕らも単にノスタルジックなスポーツカーを作ったわけではなく、クルマ自体は古典的なんだけど、それを核に新しいテクノロジーをたくさん取り入れた、新しいスポーツカーの遊び方を提案しているんです。