論理の経営に限界、エリートが「美意識」を鍛えるワケ人生の景色が変わる本(5) 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』

そんな市場で有効なのは、物事の因果関係から理詰めで解を求める従来型のアプローチではなく、直感的に捉えた解を基に試行錯誤するクリエイター的手法だ。マッキンゼー&カンパニーがデザイン会社を買収したのも、ユニクロなどの成長企業が経営全般のアドバイザーとしてクリエイターを起用しているのも、そのためだろう。

要点3 内なる美意識で行動を律してこそ身を守れる

システムの急激な変化に法整備が追いつかない現状も、高い美意識が求められるひとつの理由だ。企業の不祥事の根底には、明文化されているルールにさえ従えばいいという、「実定法主義」の蔓延(まんえん)がある。実定法主義者(特にエリート)は目標達成が難しくなると、法的にも倫理的にもギリギリの線まで粘ってしまう。揚げ句、その後の法整備で犯罪者の烙印(らくいん)を押されるケースが少なくない。真善美の感覚(つまり美意識)を研ぎ澄まして行動を律する必要がある。

要点4 美意識の基礎は哲学 鑑賞力を鍛える研修も

論理を超えたビジネススキルを磨く方法として、多くの企業が採り入れているのがVTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジー)だ。絵画などを鑑賞し、感じたことを話し合う。他人の目にその絵がどう見えるのかを知り、自分の見方のパターンに気づくことは、かつてない変化を捉える(あるいは起こす)力を励ます。

哲学を学ぶこと、物語や詩に親しむことは、美意識の根幹を固める基本的な営みといえる。特に哲学は、今なお西洋のエリート教育で重視される教養の土台。哲学者の論そのものより考え方を吸収することで、大人の見識が養われる。

(手代木建)

[日経ウーマン 2018年12月号の記事を再構成]